民法改正のポイント|不動産相続関連その2:持ち戻し免除

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こんにちは!estate_diaryです。

 

前回に引き続き、民法改正に関する解説をしていきたいと思います。

民法改正の解説と言っても民法全般を解説するのは大変なので、誠に勝手ながら不動産業に関係のある分野を解説中です!

今回は第2弾として「相続法」の中から「持ち戻し免除」に関する改正内容をお伝えいたします。 

 

「持ち戻し」ってなぁに?

「持ち戻し」なんて日常生活ではなかなか聞かない言葉ですね。

私もこの仕事をしていなければ、おそらく出会わなかった言葉だと思います。

「持ち戻し」とは、生前贈与で受け取った財産を遺産分割の総額に加算することです。

 

【例】

被相続人A(亡くなった人)が生存中に、後の相続人となるBに財産の一部を贈与(生前贈与)したとします。

被相続人Aが亡くなって財産分与をするとき、すでに財産の一部を受け取っているBと、B以外の相続人が同じ割合で遺産分割を受けるとB以外の相続人が損をしてしまします。

そのためBがAから受けた生前贈与は「特別受益」として扱われ、原則として遺産分割する財産の総額に加算されます。

この加算する行為を「持ち戻し」と言うのです。

 

【特別受益】

相続人が複数人いる相続において、一部の相続人が被相続人から個別で遺贈された(受け取った)財産が特別受益です。一部の相続人だけが生前に贈与を受けているにも関わらず、均等に遺産分割を行ったのでは、他の相続人にとって不公平です。特別受益とは共同相続人の公平を保つ観点から生まれた概念なのです。

 

原則として、共同相続人の中に生前贈与を受けた者がいる場合は、その財産は特別受益として扱われます。

そのため現存する財産に特別受益を加算したものが相続財産の総額とされ、そこから各相続人の相続額が割り出されます。

特別受益を受けた相続人は、相続額から特別受益分を差し引いた額を受け取ることになります。

 

持ち戻しの免除

生前贈与を相続財産に加算する「持ち戻し」ですが、実は免除することができます。

生前贈与が特別受益として相続財産に加算されると、受贈者に対して「他の相続人よりも多く財産を譲りたい」と思った被相続人の気持ちが台無しになってしまうからです。

この被相続人の思いを実現させる制度が「持ち戻しの免除」なのですが、今回の民法改正で、その「意思表示」に関して新たな項目が追加されました。

改正前の持ち戻し免除

元々の法律では、被相続人が贈与等によって財産を分与した場合、その財産を特別受益として取り扱わない旨の意思表示が必要でした。

その意思表示を「持ち戻し免除の意思表示」と言い、この意思表示がされたときは、遺産分割において持ち戻し計算を行わないことが認められていました。

 

改正後の持ち戻し免除

改正後の法律では、持ち戻し免除の意思表示において「推定」が働く要件が新設されました。

一方の配偶者が他方の配偶者に居住用不動産の贈与等を行った場合、持ち戻し免除の意思表示を行っていなかったとしてもその意思表示があったもの」推定するという内容です。

この推定は、婚姻期間が20年以上の夫婦間で相続が発生した場合に適用されます。

この改正で遺産分割における財産の計算上、当該居住不動産の持ち戻しが原則不要となりました。

この規定により生存配偶者の相続分の保護が図られ、生活が困窮することを防ぐ効果が期待されます。

 

「持ち戻し免除」のまとめ

持ち戻し免除は以前から存在する制度でしたが、遺贈者の「持ち戻し免除の意思表示」が要件であったことからハードルの高いものでした。

しかし今回の法律改正で、20年以上の婚姻期間があれば免除の意思が「推定」されるようになりました。

これは法律の専門知識を持っていない方でも叶う要件で、ハードルもかなり下がったと言えます。

ただし、遺産分割のときにこの制度を知らなければ活用できません。

万が一、居住不動産を所有する配偶者が亡くなってしまったときは、専門家を交えて遺産分割協議を行うことをお勧めします。

 

 

相続人不存在の不動産はどうなるの?国の対応と相続不動産の帰属

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不動産業者として相続の勉強をしていると、その奥の深さに学習意欲をかき立てられます。

今回は不動産業とはあまり関係がないのですが、相続人が誰もいない不動産の行く末を考えてみましょう。

 

相続人不存在の相続財産

「相続人不存在」とは、誰かが亡くなったとき「その人の財産を相続する人が誰もいない」という状態です。

相続する人がいなければ、残された財産は行き場を失ってしまいます。

さて、これらの財産はどうなってしまうのでしょうか?

 

【一般的な財産の行方】

相続人のいない相続財産は、検察官や利害関係人の申し立てによって選任された「相続財産管理人」によって処分されます。

相続財産管理人の選任は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てて行います。

専任されればその旨を公示し、以下のような役目を果たします。

  1. 戸籍などを取り寄せ、相続人がいないか捜索する
  2. 相続財産の換価
  3. 相続債権者への支払い
  4. 受遺者(遺言によって財産を譲り受ける人)が遺贈を受けるかの意思確認
  5. 特別縁故者への遺産分与

これらの作業を全て終えても財産が残った場合、残りの財産は国庫へと帰属します。

  

【他の財産とはちょっと違う不動産の事情】

一般的な相続財産はおおむね上述の作業によって処理されますが、不動産にはちょっと違う事情が存在します。

一般的な財産は単独所有がほとんどですが、不動産の場合「共同所有」という概念がありあます。

もちろん全ての不動産に当てはまるわけではありませんが、意外と多いので注意が必要です。

 

 相続人不存在の不動産に「共有者」がいる場合

 

民法255条には、共有者が死亡して相続人がいない場合、その持ち分が他の共有者に帰属する旨の規定があります。

その規定に従うと、相続人のいない不動産は、他の共有者が引き継ぐことになりそうです。

民法255条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がいないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。 

 

「共有者」と「特別縁故者」はどっちが優先?

相続人不存在の不動産に共有者がいた場合、不動産はすんなり共有者のものになるのでしょうか?

実はそうでもなさそうです。

相続不存在の場合、相続財管理人は「特別縁故者」が名乗り出ないか調べます。

この特別縁故者は「相続人」の身分を有していない第三者なのですが、生前、故人と内縁関係にあったり、故人を献身的に看護したりなど、特別な事情により遺産を受け取る権利のある人です。

民法958条の3(抜粋)

前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めていた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、それらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

 

相続人はいないが特別縁故者がいる相続不動産の場合、共有者と特別縁故者、どちらが優先されるのでしょうか?

 

判例によると、共有者と特別縁故者が存在する場合、特別縁故者が優先して遺贈を受けられるそうです。(最高裁判例平成元年11月24日)

従って共有者は、相続人も特別縁故者もいない場合に不動産を取得できることになります。

判例趣旨

共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続きが終了したときは、その持分は、民法九五八条の三に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされないときに、同法二五五条により他の共有者に帰属する。(反対意見がある。)

 

相続人不存在不動産に対する国の対応

 現在、引き取り手の不在や所有者不明で国庫に帰属されている不動産は、相当数存在しています。

それらの多くは利用価値が低く、管理コストの増大が問題視されています。

国はこれら管理費や不明の所有者を捜索する費用を抑えるため、将来的に国庫帰属となる可能性のある財産に対して、死因贈与契約を締結するなどの取り組みを行っています。

しかし相続人不在などの不動産がスムーズに国庫帰属されても、それはストックされた不動産を活かすことにはつながりません。

引き取り手のない不動産が活躍できるよう、多様性のある世の中になることを願うばかりです。

相続した不動産は売るべき?貸すべき?それぞれのメリットとデメリット!

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相続した不動産を売るのか貸すのか?

これは永遠のテーマとも言える問題ですが、不動産業を営んでいると必ず相談されることです。

相続した不動産をどう活かすのか?その答えはケースバイケースですが、悩んでいる方の方向性が決めやすくなるよう「売る」「貸す」それぞれのメリット・デメリットを解説いたします。

 

不動産を売却する場合のメリット

不動産を相続したとき、まず思い浮かぶ選択肢が売却です。

売却にはどんなメリットがあるのでしょうか?

 

■まとまったお金が入ってくる

所在地や広さによっても違いますが、多くの不動産の場合、売却すればある程度のまとまったお金が入ってきます。

 

■税金などの維持費が掛からない

地目や所在地によっても金額に差はありますが、不動産を所有していると毎年「固定資産税」の支払い義務が発生します。

売却すれば固定資産税の支払いや、その他の維持費も掛からなくなります。

 

■管理の手間が掛からない

不動産を所有していると、さまざまな労力が必要です。

建物であれば古くなった箇所を修繕費しなければなりませんし、土地であれば草刈りなどの手入れが必要です。

売却して不動産を手放すと、これらの負担から解放されます。

 

不動産を売却する場合のデメリット

メリットがあればデメリットもあります。

不動産を売却する時にはどんなデメリットがあるのでしょうか?

 

■売るタイミングによっては損をする

売却をためらう一番の理由はこれじゃないでしょうか?

不動産を売却したあと、地価が高騰するケースがあります。

1年くらいで大幅に変わることは稀ですが、都市部に近い場所では5年~10年で大幅に値上がりするケースもあります。

 

■意外と掛かる売却費用

不動産売却には仲介手数料や登記費用、測量費用や整地費用など、高額の費用が掛かります。

これらの費用は売却代金から賄うこともありますが、先に整地をして売り出す場合は、手持ち金で工面することもあります。

 

■融資利用ができなくなる

不動産を所有していると、それを担保に融資を受けることができます。

しかし売却して完全に手放してしまうと、担保として利用できなくなります。

 

不動産を貸す場合のメリット

相続した不動産を「売却せずに運用したい」と考える方も多いと思います。

では不動産を貸し出して運用した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?

 

■継続的に収入が得られる

不動産を貸す最大の理由はこれでしょう。

不動産を貸し出すと、決まった家賃が定期的、継続的に得られます。

立地や物件の種類によっては高額の家賃収入が得られることもあります。

 

■子供に財産を残せる

収入を得ながら不動産を所有できるので、将来、子供に財産を残すことができます。

 

■売るタイミングを図れる

いずれ売却を考えている場合、収入があれば売り急ぐ必要がありません。

地価の動向や地域の需要を見極める余裕ができます。

 

不動産を貸す場合のデメリット

貸し出す場合にも、当然メリット・デメリットの両方があります。

不動産を貸す場合のデメリットを見てみましょう。

 

■借り手がいないリスク

賃貸経営でまず心配なのが、借り手がいるかどうかです。

どれだけ高い家賃設定をしても、借り手がいなければ1円も入ってきません。

今の日本では、古い物件や地方の空き家が社会問題になっています。

 

■維持費が掛かる

賃貸物件として貸し出す前に、傷んだ箇所をリフォームする必要があります。

最近では「自由にリフォームできる物件」として現状貸しするケースもありますが、一般的に浸透しているとは言えません。

 

■管理義務が発生する

賃貸経営をする場合、ほったらかしで運営できるわけではありません。

毎月家賃を回収したり、未払いの入居者に催促したり、街灯などの設備管理もしなくてはなりません。

多くのオーナーさんがこれらの管理を不動産会社に依頼していますが、もちろんタダではありません。

賃貸経営をするには、それなりの管理負担が発生するのです。

 

「自分の場合はどうしたいのか」を考える

相続した不動産を売るのか貸すのか?

その答えを出すためには「自分がどうしたいのか」方向性を考える必要があります。

・例えば別の場所に新居を購入予定な場合、売却してまとまったお金を手に入れる方が都合がよいでしょう。

・賃貸経営を生業としたいのであれば、相続した不動産を運用するという選択になるでしょう。

しかし、賃貸経営は「ほったらかしておいても勝手に家賃が入ってくる」なんて簡単なものではありあません。

・将来に渡って所有していたい理由がなく、現時点で納得できる地価であれば、売却もありだと思います。

 

「何のために、どう活かしたいのか?」

ご自身のお仕事やご家族の将来、不動産の利用価値など、一つ一つ考えることで答えが見えてくると思います。

相続した土地を放置したら何が起こる?土地を放置するデメリット

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先日社内でミーティングをしていた時、公示地価改定の話題が出ました。

私の会社周辺の地域は、ここ数年で地価がかなり高騰したエリアに位置しており、毎年のように公示地価も上昇しています。

 

公示地価とは、地価公示法という法律に基づいて、毎年3月頃に発表される土地の標準的な金額のことです。

地価公示は全国規模で行われるのですが、全ての土地を対象としているわけではありません。

今後、ある程度の取引が見込める土地や都市計画区域(近い将来開発を進めたい区域と、しばらく開発させたくない区域を行政が指定した地域)で、国土交通省が定めた区域が対象です。

 

そして私には、公示価格改定のたびに思い出す知人の相続エピソードがあります。

 

相続した土地を放置した知人

私の知人は父親から土地を相続したのですが、長く使われていない荒れ地だった為、気にも留めず放置していたそうです。

その土地は知人が小さい頃からすでに父親が所有しており、いくらで手に入れたのかは知らないとのことでした。

月日が経つにつれその土地周辺は宅地化が進み、知人が相続した頃には爆発的に地価が高騰していました。

しかし知人は、その土地が農地であったことから大した値打ちはないと思い込み、運用することもなく放置していたのです。

 

トラブルその1:近隣からの苦情

知人が放置していた土地を気にするきっかけは、役所からの電話だったそうです。

「お宅の土地に草が生い茂り、近隣から苦情が出ています」

役所の人にそう言われて、知人は慌てて業者に草刈りを依頼したそうです。

直接苦情を言われたわけではないため、誰が苦情を出したのかが分かりません。謝罪もできない状態の知人は、近隣の方に遭うのがとても憂鬱だったそうです。

しかも数百坪の土地だったため、草刈り費用も結構掛かったのだとか。

 

トラブルその2:生産性のない土地

 放置している土地には生産性がなく、固定資産税の出費だけがかさみます。

幸い農地だった知人の土地は、固定資産税はさほど高くありません。

しかし周辺地域の発展ぶりを考えれば、宅地として販売したり、整地して貸し出たりすることも充分可能な立地です。なのに知人は、そのどちらもしていません。

これほどの土地を所有していながら、知人は収益を上げるチャンスを何年も逃していたのです。

 

知人へのおすすめプラン

せっかく相続した土地にあまりにも無頓着だった知人ですが、いかにもったいないことをしているのかを私が説明すると、やっと運用する気になってくれました。

私が提案したのはプランは2つです。

 

■プラン1:売却して利益を得る

これは一番安易なプランですが、土地を売却することを提案しました。

当該土地が宅地として人気上昇中のエリアであったことや、知人の「無頓着ぶり」から手放す選択肢も「あり」だと考えたのです。

 

■プラン2:貸出して運用する

荒れた農地であることから貸すことすらしていなかった知人の土地ですが、周辺地域の発展を見れば、借り手を探すのも難しくはありません。

農地として貸し出すよりも、整地して駐車場にするか、資材置き場として貸し出すことを提案しました。

 

ひとまず農地転用申請を!

私が提案したプランの中から、知人が選んだのはプラン2の「貸出して運用する」でした。

経済的に余裕のある知人は、当該地をキャッシュで整地する余裕があり、時間的にも切迫していません。

ひとまず農地転用申請を行って、建物が建築できる土地にしておいた方が、後々売却する時にも有利であると考えたのです。

知人の土地があるエリアは今でも地価が上がり続けていて、おそらく下がることはありません。

気が向いたときに売却すれば、今よりも大きな利益がでることでしょう。

ちなみに整地を終えたその土地は、早々に近くの企業が借り上げてくれました。

 

最後にもう一つ

今回の知人のケースでは相続した土地が農地であったため、固定資産税がそんなに高くありませんでした。

しかし相続した不動産が宅地や都心にある場合は、高額の固定資産税が課されるケースもあります。

もらったモノだと思って無関心でいると、予想外の出費を負担することになるのです。

 

相続などで不動産を持て余したときは、売却や運用も視野に入れて、専門の不動産屋に相談してみてください!

遺産分割協議は揉める?遺産分割が上手くいった家庭のケース

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亡くなった親御さんが資産家だった場合、残された子供たちの間で問題になるのが遺産分割です。

遺産相続の基本的な割合は法律で決められていますが、単純に当てはめられないのが遺産相続の難しさです。

「相続争い」との言葉があるくらい揉め事の原因となる遺産分割ですが、なにもお金持ちだけの問題ではないようです。

相続でもめるのはどのような家族なのでしょうか?

一説によると、相続争いは一般的な中流家庭で多く発生するそうです。しかし、必ずしも揉める家庭ばかりではありません。

 

これは、先日売買が成立したお客様のお話です。

農業をしていたお父様がなくなり、使っていない農地を売却されました。

兄弟4人が相続人で、土地の売却代金や預貯金など、合わせて1億円近い財産が残ったそうです。

このご家庭では遺産分割協議で揉めることもはなく、スムーズに相続がすすんだそうです。

その土地は長い間、畑として使っていたのですが、ここ数年急激に宅地化が進んだエリアにありました。

土地自体は地目が「畑」であるため、相続されたご家族はそんなに価値があるとは思っていなかったそうです。

 

相続人の構成

このご家庭の場合、お母さんはお亡くなりになっていたため、相続人は子供4人だけです。

しかしちょっと驚いたのが、一番下の御兄弟は非嫡出子。いわゆる、お父さんが外で作った腹違いの子供だそうです。

一般的に考えて、揉めるとしか思えません。

しかしこのご家庭では、円満に遺産分割をしたというのです。

 

揉めなかった理由

このご家庭の場合、揉めない理由がいくつかありました。

 

■理由その1:兄弟の仲が良い

「遺産分割協議では、これまで仲の良かった兄弟でも醜い争いをする」なんて話も聞きますが、このご家庭は違っていたようです。

お母様が肝の据わった方だったようで、小さい頃から、腹違いのご兄弟とも仲良くするよう言われて育ったそうです。

今は遠くに住んでいるそうですが、お互い憎まれ口もたたくほど仲良しなんだとか。

 

■理由その2:そもそも遺産を当てにしていなかった

このご兄弟は数筆の土地を相続していましたが、どの土地も農地で、さほど価値が期待できない土地でした。

そのため相続人全員が土地の存在を忘れるほど、当てにしていなかったそうです。

しかしその土地があった場所は、お父様がなくなる数年前から宅地化が急激に進み、地価がどんどん上がっている地域でした。

当社でお預かりしたときには、10年前の相場より5~6倍に跳ね上がっていたのです。

私が土地の査定額を説明したときには「こんなに高いの?ラッキー!」と言って、皆さんゲラゲラ笑っていたのを覚えています。

 

■理由その3:遺産分割協議は譲り合い

このご兄弟は仲が良いとお話ししましたが、その仲の良さは、お互いを尊重する気持ちから生まれていると思われます。

一番上のお姉さんは、遺産分割協議で揉めなかった理由を「納得するまで説明した」とおっしゃっていましたが、少しニュアンスが違うと思います。

実際には「納得するまで、相手の話も聞いて話し合った」のだと即座に感じました。

誰かが一方的に自分の都合を説明してきても、それで納得する人はいません。

自分の都合を説明しつつ、相手の話にも耳を傾ける。その両方ができる兄弟だからこそ、揉めずに意見がまとまったのです。

 

estate_diaryの個人的な見解

遺産分割をする場合、仲の良い兄弟でも相続争いをすると言われています。

正直言って、私は「その兄弟、本当に仲が良いの?」と疑問に感じます。

私の場合は親に資産がなかったため、遺産分割協議の経験がありません。

もし相続財産があったとしても、両親のためにお金や労力を使った兄弟が受け取ればいいと思っています。

実は私、兄弟の中でも、一番両親のために出費をしている自負があります。

休みのたびに時間を割いて、あちこち遊びにも連れて行きました。

確実に一番親孝行(自称)です。 

もしも自分の親が資産家であれば、一番多く相続財産を要求したいところです。

でも私は、遺産分割協議になっても「私にたくさんくれ!」とは言わなかったと思います。

なぜなら、親孝行は自分がしたくてしていることです。遺産をたくさんもらうためではないからです。

だって親の財産なんて、もともと自分のモノではありません。たとえ金額か少なくても、もらえるだけでラッキーだとは思いませんか?

 

相田みつをさんの言葉で「奪い合えば足らぬ 分け合えばあまる」という一節があります。

私の意見はあくまでも想像の域ですが、今回ご紹介したご兄弟は、この言葉を実践している素敵な人たちだと思いました。

親名義の土地を相続しても、名義変更はしなくていい!?相続税って高いの?

 

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 親御さんが亡くなって相続が発生した時、心配になるのが税金のことです。

相続税がいくらぐらい掛かるかなんて、普段は考えたこともない!なんて方も多いと思います。

まして、土地などの不動産を相続することになると、税金以外にも難しい手続きや出費が掛かりそうで不安。そう感じる人も珍しくありません。

 

そこで今日は土地を相続したケースを例に、相続税や名義変更のお話をしたいと思います。

 

相続が発生したら何をすればいいの?

 

土地の相続が発生したときの大まかな流れは、以下の通りです。

 

①相続の意思確認

相続が発生した時、相続人は相続するか相続放棄するかの選択ができます。

相続放棄をする場合は家庭裁判所への申し立てが必要ですが、放棄しないことに関する手続きは特にありません。

相続が発生したことを知った日から3ヵ月以内に相続放棄をしなければ、自動的に相続することが確定します。

 

②遺産分割協議

亡くなった人が遺言書を残している場合、相続財産を誰がどの割合で受け取るかは、遺言書の内容に従います。

遺言書が残されていない場合は、遺産分割協議で決めることになります。

しかし遺産分割協議は相続人全員の同意で成立するため、まとまるまで時間が掛かるケースもあります。

 

③相続登記

遺産分割協議書ができあがったら、土地の名義を亡くなった人から相続人へ変更します。

俗にこれを、相続登記と言います。

相続登記は相続人自ら行うこともできますが、専門知識が必要なため、殆どの人が司法書士へ依頼して行います。

 

④納税

相続人と相続財産額が確定したら、相続税額を計算し納税します。相続は納税額を割り出すまでに、多くの知識を必要とします。ケースバイケースで控除されるものも変わってきますので、税額の計算は税理士へ依頼することをおすすめします。

 

相続時に一番気になる「税金」

 

不動産の名義人が変わるときに発生する税金には、相続税と不動産取得税があります。

土地の相続で名義が変わる場合は相続税が課税されるのですが、相続人の中には「不動産取得税も課税されるのでは?」と心配される方がいます。

大丈夫です。両方は課税されません。

ただし、誰が受け取るかによっては、相続税ではなく取得税が課税されるケースがあります。

 

【ケース①遺贈】

通常、相続は親族が受けるものですが、遺言書にによって他人に財産を残すケースがあります。

これを遺贈と言い、不動産取得税の対象となります。

 

【ケース②死因贈与】

死因贈与とは、特定の人に特定の財産を与えるという内容の契約を、生きているうちに交わすものです。

こちらも不動産取得税の対象です。

 

肝心の税額はいくら?

 

相続税の計算方法は、

まず、相続財産の総額-(基礎控除3,000万円+600万円×相続人の数)で課税対象額を出し、さらに税率を掛けて計算します。

 

分かり辛いので、相続財産総額が5,000万円の場合を例にご説明します。

 

相続人が1人なら、財産総額5,000万円-(基礎控除額3,000万円+600万円×1)で、課税対象額は1,400万円となります。

1,400万円に、該当する税率を掛けると納税額です。

 

相続人が4人なら、相続財産額5,000万円-(基礎控除額3,000万円+600万円×4)で、課税額は-400万円となり、税金が掛からないことになるのです。

 

詳しい税率はこちら

No.4155 相続税の税率|国税庁

 

引用:国税庁ホームページ

 

 

 

名義変更はしなくてもいいって本当!?

 

相続に限らず、実は不動産の名義変更登記は義務ではありません。

だからと言って、名義を変更せずそのままにしておくと、後々不都合なことが起きる可能性があります。

 

名義を亡くなった人のままにしておくと、相続不動産は「相続人全員の共同所有」という扱いにあります。

万が一、相続人の一人が財産の差し押さえなどを受けた場合、相続不動産の一部も差し押さえられることがあります。

そうなってしまうと、売却したくてもなかなか売れなくなってしまします。

 

他にもデメリットは多々ありますので、

権利変動があった時は速やかに変更登記をしましょう!

 

以上、名義変更と相続税のお話しでした。

相続放棄した方がいい土地ってどんな土地?その末路は!?

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土地の売却でいらしたお客様のお話です。

山奥に複数の土地をもっているが、長い間使っていないので処分したいとのご相談です。

場所を確認してみると、集落からも距離が離れ、周囲に人工物は殆どありません。

 

なぜそんな場所に土地を所有しているか尋ねると、昔、親御さんから相続したとのことです。

代々その地域に住んでいるそのお客様は、何の疑問もなくその土地を相続したそうですが、最近では管理を負担に感じるようになってきたそうです。

 

残念ながらその土地は、需要を掘り起こすのが大変難しい立地です。つまり、売れそうにありません。

今のところ買い手は見つかっておらず、売主様の負担は当分続きそうです。

 

ここで一つ、私の中で疑問が浮かびました。

 

相続放棄された不動産って、最後はどうなるんだろう?

 

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 このお客様の場合は相続が完了しているので該当しませんが、もしも不要な土地の相続を放棄したら、その土地はどうなってしまうのだろう?

 

安易に相続してはいけない土地がある!?

 

近親者が亡くなったとき、法律で定められた家族らが自動的に相続人となります。

しかし相続人には相続を放棄する権利が認められており、これを「相続放棄」と言います。

相続財産の中には借金など多額の負債が含まれているケースもあり、理不尽な相続から逃れるためには、相続放棄は有効な手段です。

 

例えば多額の借金を相続放棄すれば、最終的には「回収不能」なり、債権者が泣きを見るという結末が考えられます。これはなんとなく想像できます。

では、放棄した財産が土地の場合はどうでしょうか?

 

相続放棄をしたくなる土地とは、いったいどんな土地なのでしょうか?いくつかご紹介します。

・使用する予定がなく、所有しても固定資産税ばかり出費する土地

・売却したくても買い手がつかない、利用価値の低い土地

・山林や斜面など、管理にお金がかかる土地

 

今回ご相談いただいたお客様は、上記のすべてに当てはまります。

 

このような土地を相続の段階で放棄すると、どうなるのでしょうか?

 

相続放棄をしても無関係にはならない!?

 

金銭などの財産と違い、相続した土地には「管理責任」がくっついてきます。

通常、相続放棄をすると、法律で定められた「次」の相続人へと相続は移ります。

そして、放棄した人は相続とは無関係になり「はい、おしまい!」です。

しかし、土地の相続の場合は「はい、おしまい!」にならないのです。

 

土地の相続の場合、放棄で手放せるのは「名義」だけです。

次の相続人が見つかるまで、土地を管理する責任は残ってしまうのです!

 

しかし、負担を強いられるような相続を引き受ける人は、まずいません。

次の人も、その次の人も相続放棄をするでしょう。

その結果、相続人はいつまでも土地の管理をする羽目になるのです。

 

ちなみに、この管理義務は民法940条に規定されていて、違反すると罰則もあるそうです!(涙)

 

【管理義務を免れる方法は?】

相続人となる身内が全員相続放棄をした場合、管理責任から逃れる方法はないのでしょうか?

実は、あります!かなり面倒な方法ですが、家庭裁判所で「相続財管理人の選任の申し立て」をすればよいのです。

利害関係人または検察官の請求によってなされるものです。

この申し立てが認められ、財産管理人が選任されれば、晴れて不要な土地から解放されます!

 

【最終的に、土地誰のもの?】

相続人のいない財産は、最終的には国庫に帰属します。つまり、国の財産となります。

このようにして国庫帰属する財産は、毎年、相当数あるのだそうです。

 

これからの日本の課題

相続人がいない土地や家屋が、全国的にも問題になっています。

人口の極地化や少子高齢社会などが影響する不動産の世界は、世相を反映する鏡とも言えそうです。

日本は国土の小さい国です。地方も都市も今ある不動産を上手に活用して、もっともっと元気な日本を創って欲しいものです。

相続した不動産、名義変更は必ずするの?登記申請は自分でできる!?

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先日、亡くなった親御さんが残した土地を売りたいとのご相談を受ました。

その際お客様からのご質問が気になったのでご紹介します。

 

(質問)

相続した土地は、登記しないといけませんか?

 

(回答)

登記自体は義務ではありませんが、売却するのであれば登記が必要です。

なぜなら、登記名義を被相続人(亡くなった人)から直接買主に変更することはできないからです。

不動産登記は、実際の権利変動を記すのもなので、相続が発生した時はその旨の登記が必要です。

 

ご相談くださったお客様は売却が前提だったので、名義変更をするようおすすめしました。

 

ここで少し、不動産相続登記についてお話ししたいと思います。

 

そもそも登記は何のためにするのか?

 

不動産登記とは、自分がその不動産の所有者であることを第三者に対抗するための制度です。

ちょっと分かりにくいのですが、例に沿ってご説明します。

 

(例)

Aさん、Bさん、Cさんがいるとします。

Aさんは、所有していた土地をBさんに売りました。

すると、土地の所有者はBさんになります。

 

ところがある日、Cさんが登場し「その土地は私がAさんから買ったものです」と主張してきました。

実はAさんは、Bさんに土地を売って代金を受け取ったにも関わらず、当該土地をCさんに二重売買していたのです。

Cさんも代金は支払っています。

土地の所有権は、誰にあるのでしょうか?

 

この場合Bさんの立場から見ると、土地の売買契約に直接係わっていないCさんのことを、第三者といいます。

Bさんが第三者Cさんに勝つためには、Cさんより先に所有権の登記をする必要があります。

不動産登記の原則は「先に登記を備えた方が勝ち」です。

これを「第三者対抗要件」と言います。

 

つまり不動産登記とは、他人が所有権を主張してきたときに「この不動産は私のものです」と言って対抗するための制度です。

 

 

不動産相続登記で必要なモノは?

 

不動産登記で、所有権移転登記をする時の必要書類は以下の通りです。

・登記申請書

・登録免許税(登記印紙)

・登記識別情報または登記済証(いわゆる権利書)

・登記原因証明情報(どうして所有権が移ったのか証明する書類)

・印鑑証明書

・住民票

・代理権限証明情報(司法書士などへの委任状)

 

登記原因証明情報とは、売買であれば「売買契約書」などが該当します。

相続で名義変更をする場合は、公証人役場や家庭裁判所で効力が証明されている「遺言書」や、相続人全員の同意を得た「遺産分割協議書」などが該当します。

 

詳しくはコチラ

不動産の所有者が亡くなった:法務局

 

引用:法務省ホームページ 

 

 

不動産登記は自分でできる!?

 

不動産登記と聞くと、ついつい司法書士へお願いするものだと思いがちです。

 でも実は、不動産登記は自分でやってもOKです。

もちろんそれなりの知識が必要ですが、専門士業に頼まないといけないわけではありません。

 

但し、相続による名義変更登記の場合は、遺産分割協議で司法書士にお世話になっているケースが多いです。

素人仕事をするよりは、事情をよく知っている司法書士に依頼するのが無難と言えます。

 

一緒に提出すると便利!「法定相続情報証明制度」

 

これは余談なのですが、相続が発生すると銀行や取引先など、あちこちで手続きが必要です。

しかし、行く先々で戸籍などの必要書類を提出するのは、なかなかの負担です。

そんな時に便利なのが「法定相続情報証明制度」です。

 

平成29年にスタートした制度なのですが、法務局で所定の手続きをすると、相続人と被相続人の関係を証明する書類を発行してくれます。

手続き費用は無料で、希望した枚数を発行してくれます。

 

申請書の作成など多少の手間は掛かりますが、自分でも申請が可能なので、作っておいて損はありません!

 

以上、不動産相続登記のご説明でした!

相続は楽じゃない!?親名義の土地を相続する時に注意するべきこと!

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お親御さんが亡くなり、残された土地の処分を希望される方からのご相談がよくありあます。

その時痛感するのが、相続も楽じゃないな!ということです。

 

そこで今回は、

 親名義の土地を相続する時にやることを簡単にご紹介します。

 

流れは以下の通りです。

①相続を受けるかの意思決定(放棄する場合は相続放棄の申し立てをする)

②遺言の有無の確認

③(遺言がない場合は)遺産分割協議

④相続する土地の登記名義変更

⑤納税

ざっと挙げてもこのくらいはあります。他にも、相続した土地を他人に貸しているなど、場合によってさまざまな手続きが必要です。

 

一つずつご説明します。

 

【相続を受けるかの意思決定をしましょう!】

 相続とは、親や兄弟などの近親者(被相続人)が亡くなると自動的に発生する法的身分です。

そのため相続人には、その相続を受けるか放棄するかを選ぶ権利が与えられています。

これを相続放棄といいます。

相続財産の中には、プラスの財産(資産)よりもマイナスの財産(負債)が多いケースも多々あります。

相続で借金を背負うのを避けたい場合は、相続放棄制度を検討してみてください。

 

以下、相続を放棄しなかった場合のご説明です。


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 【遺言書があれば、遺言の意向が優先される!】

 相続財産がある場合、誰がどのように相続するかは遺言書によって決定できます。

そして、遺言書を残すには一定の要件があります。

家庭裁判所や公証人役場で承認されているなどの有効な遺言書がある場合は、遺産分割は遺言書の意向が優先されます。

 

今は法務局で遺言書を預かるサービスも行っていますので、遺言書を残したい方は、一度法務局へ相談してみてください。

 

【遺言書がない場合は遺産分割協議で決定!】

遺言書が残されていない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い相続内容を決定します。

遺産相続協議はなかなかまとまらないケースもありますので、司法書士などの専門家を交えるのがおすすめです。

 

【不動産登記名義の変更をしましょう!】

 相続人の意見も一致し必要書類が揃えば、相続する土地の登記名義を変更しましょう。

登記名変更登記は相続人自身が行うこともできますが、自信がない場合は専門家に依頼した方が無難です。

遺産分割協議でお世話になった司法書士に、そのまま依頼する方も多いようです。

 

【ついでに申請すると便利!「法定相続情報証明制度」】

相続財産には、不動産以外にも銀行預金や有価証券などがあります。

これらの資産に関する手続きをする際は、相続人である事を証明するための書類提出が必要です。

具体的には戸籍謄本等ですが、関係機関ごとにこれらの書類を提出するのは大変です。

そこで便利なのが、法定相続情報証明制度です。

これは、相続人の身分を証明する書類を、法務局が発行してくれる制度です。

費用も無料なので、申請しておいて損はありません!

 

【相続税の納税も忘れずに!】

 親名義の土地を相続する時、予想外な出費となるのが相続税です。

土地をそのまま相続人所有にする場合や、売却して遺産分割する場合など、相続の仕方によっても税額は変わってきます。

こちらもケースバイケースですので、詳しいことは税理士への相談がおすすめです。

 

相続は生きているうちがおすすめ!?生前贈与

 

相続税の節税方法として、生前贈与を利用ケースもあります。

 

土地を贈与する場合は、不動産取得税や贈与税、名義変更登記費用などの経費が掛かります。

しかし、課税されるタイミングによっては、生前贈与の方が総支払額が低くなる可能性があります。

 

例えば、対象土地の価格が将来大幅に上がる場合です。

税金の課税対象額が上がれば、税額はおのずと高くなります。

土地価格の低いうちに贈与を受けた方が、結果的に出費を抑えられることがあるのです。

 

但し安易に生前贈与をすると、相続よりも費用が掛かり、全く節税にならないケースもあります。

生前贈与を検討する時は、税金や地価変動に詳しい専門家と相談し、綿密な計画を練ってから実行してください。

 

以上、親名義の土地を相続する注意点でした!

 

 

不動産投資って本当に儲かるの?初心者が物件を選ぶときに注意したいこと。

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不動産業に従事していると、投資物件の問い合わせを受けることがあります。

不動産投資に精通したお客様であれば該当物件を紹介したり、初心者の方には投資物件の選び方をお話ししたりします。

 

すでにいくつか投資物件を所有している方であればご相談はスムーズなのですが、初心者の場合「他の業者に投資物件を勧められたけど、大丈夫かな?」という趣旨のご相談も見受けられます。

 

不動産物件の良し悪しの判断はケースバイケースです。

しかし、不動産投資を始めるならば、最低限の知識は持っておきたいものです。

ここでは不動産投資物件を買う前に知っておきたい、基本的な知識をご紹介します。

 

不動産投資の基本!利回りってなに!?

 

不動産の投資物件探しをするとき、必ず出てくるキーワードが「利回り」です。

多くの資料には「表面利回り〇%」と書かれていると思います。

 

しかしこの利回り、2種類あるので注意が必要です!

 

【表面利回り】

殆どの物件で表示されているのが、この「表面利回り」で、文字通り表面的な利益の計算方法です。

 

家賃収入額を物件購入価格で割ったもので、かなり大雑把な数字と言えます。

 

【実質利回り】

家賃収入を得たいと考えるならば、こちらを重視すべきと言える計算方法です。

 

家賃収入から必要経費(修繕費や管理会社への支払額など)を差し引き、物件購入額で割ったものです。

より実質的な利益が見えますので、物件選びでまず確認すべきポイントです。

 

不動産業者のおすすめ物件は要注意!

 

お客様からのご相談の中には、他の業者から勧められた投資物件があります。

手前どもはお客様の要望に合わせて物件紹介をするスタイルなのですが、不動産業者の中には投資物件を専門に扱う業者もあります。

もちろん良心的な業者もたくさんありますが、とにかく売上重視!という業者もあります。

こういう業者がおすすめしてくる物件は要注意です!

 

お客様の利益を後回しにする業者は、売れ残った物件ほど見栄えを良くする傾向があります。

「高利回り!」「好立地!」などと謳われている物件でも、よく見ると築年数に見合わないほど高値だったり、資料のすみっこに小さく不利な内容の記載があったりします。

 

「おすすめですよ!」「早くしないと売れてしまいます!」などと言ってくる悪徳業者には注意しましょう!

 

 

自分の目で確認できる場所にあるか!?

 

不動産投資を思い立った時、浮かびがちな考えにも落とし穴があります。

 

「自分が住むわけじゃないんだから、遠くの知らないエリアでもいいっしょ!」とか「現地の管理会社にお願いするんだから、見たことない遠隔地の物件でもいいや!」そう思っている人はいませんか?

運良く満室経営が続き、入居者もモラルの高い方ばかりであれば、遠隔地の物件でも大丈夫かもしれません。

しかし、現実は甘くはありません。

 

【物件選びは自分の目で見て決める!】

実際に現地の環境を知らない物件を買うのは、避けるべきです。

不動産というのは建物だけで価値が決まる訳ではありません。

どんな立地にあるのかで、入居率や家賃相場が変わってきます。

 

物件資料では家賃収入が高く設定されていても、実際に現地を見ると「こんな家賃じゃ誰も借りない!」なんて物件もあります。

 

【目が届かない物件は荒れてしまう!】

基本的には管理会社に運営を頼む場合でも、自分の目が届かない遠隔地の物件は荒れる傾向があります。

 

理由はさまざまですが、例えば、オーナーが遠隔地にいるのをいいことに管理会社が手抜きをする、なんてケースも考えられま。

 

投資物件選びのコツは、信用できる相談相手を選ぶこと!

 

不動産業者の私が言うのもなんですが、不動産投資物件を選ぶ際は、信用できる業者を見つけることが大切です。

 

以前ご相談いただいたお客様に他社物件を紹介したとき、私は当然の事として、役所などで必要なことを調べて準備しました。

するとそのお客様は「こんなにしてくれた業者さんは初めてです!」と喜んでくれました。

以降、そのお客様は私をご指名で相談に来られます。

 

上記のお話では、私のしたことは当たり前の調査なのですが、業者の中にはそれすらやらないところもあるのです。

 

業者選びと言うと高度な目利きが必要に思われがちですが「お客様のために当たり前のことをやっているか?」をチェックするだけでも、その不動産屋の仕事ぶりが想像でます。

 

不動産投資物件を選ぶときはお客様ファーストの専門家に相談し、利益重視の業者には引っ掛からないよう注意しましょう!

 

 

居住中の家の売却と空き家の売却、税金がお得なのはどっち?

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空き家の売却と居住中の売却、同じ家でも税金が安くなる方法がある?

不動産業者で働いていると、友人や親せきから不動産に関する相談をされることがよくあります。とりわけ多いのが「売るタイミング」です。

ただ単に「不動産を高く売却したい。いつが売り時か?」との相談もありますが、親が歳をとってくると「後々相続する家をどうすればよいか?」との相談も増えてきます。

不動産の売却利益は売却価格よっても変動しますが、売却後手元に残った利益に対して課税される税金額によっても大きく変わります。

当ブログは相続に関するお悩みを解消すべく、現役の宅建業者が執筆しておりますので、今回は「後々相続する家」をどうするべきかを考えてみましょう!

【その1:居住用財産の特別控除ってなに?】

相続を考える前に、まずは居住中のお家を売却した時の税金について知っておきましょう。

家というのは人間が生活する上での基盤となる場所であり、財産の中でも特に重要視されています。

その為、所有者が現に住んでいる家(これを「居住用財産」と言います)を手放す場合は、税制上特別の優遇があります。それが「居住用財産の3,000万円特別控除」です。

不動産を売却した時に得られる利益を「譲渡所得」と言い、これが課税対象額となります。

3,000万円特別控除は、この譲渡所得が3,000万円控除される制度なのです。

「住んでいる家を手放してしまうのだから、あまり高い税金を払わせるのはかわいそうだろう」と国税庁が思ったかは分かりません。

が、住んでいる家を売却すると、課税額が3,000万円控除されると覚えておきましょう。

詳しくはこちら

No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

引用:国税庁ホームページ 

(1)居住中の定義はとは?

ところで「居住中」とは、何を基準に言うのでしょうか?

普段その家で暮らし、学校や仕事にもその家から通う。と言った、生活の基盤になっていること「居住」の定義です。

上記はごくごく当たり前のケースですが、世の中には「この場合はどうなの?」と判断に迷うケースも多々あります。

例えば、年老いた両親が老人ホームに入居した場合。この場合、生活の拠点を完全に老人ホームへ移しているのなら、自宅に「居住している」とは言えません。

同じ老人ホームでも、完全な入居ではなくショートステイやデイサービスの場合は、生活の拠点は自宅のままなので「居住している」ことになるのです。

税制改正で空き家にも特別控除が適用される!

居住財産売却時の優遇措置である3,000万円控除ですが、条件付きながら平成28年の税制改正により相続した空き家にも適用されることになりました。

これは、増え続ける空き家の対策を進める趣旨によるものだそうです。

しかもこの制度、居住用財産を売却するよりも税額がお得になるかもしれないのです!

居住財産の特別控除は1件につき3,000万円ですが、相続した空き家の控除額は3,000万円×相続人の数なのです!

例えば譲渡所得が7,000万円の家があったとします。

これを居住中に売却すると、譲渡所得7,000万円から特別控除の3,000万円が差し引かれ、課税対象額は4,000万円となります。

ところがこの家を、相続後空き家として売却すると、譲渡所得7,000万円から3,000万円×相続人の数が差し引かれます。仮に相続人が2人だとすると、7,000万円から6,000万円を引いた1,000万円が課税額となるのです。

詳しくはこちら

No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁

まとめ

税金は、専門家じゃないと分からない難しい制度です。

でも、住んでいる家を売ると税金が優遇されるとことだけでも覚えておくと、いざという時「詳しい人に相談しよう!」という気持ちになり大損は免れるはずです。

いずれ相続する予定の不動産がある方は、早めに専門家に相談するのも有りだと思います。