不動産を相続したら活用するべし|3,000万円の特別控除とは

f:id:estate_diary:20200828104220p:plain

こんにちは!estate_diaryです。

今回は家屋を売却する時に利用できる3,000万円の特別控除についてです。

現在では税制改正により、相続した空き家を売却する際にも適用ができるようになっています。

相続税を大きく減らすことができる特例について、解説します。

不動産を売却すると税金が発生する

不動産の売却した場合、所得税と住民税が発生します。

2つの税金はいずれも利益が出た時に課税されるものです。

考え方としては、「買った時の金額と売った時の金額を比べて」利益が出ていれば課税と考えると簡単でしょう。

税金が発生する場合、譲渡所得に税率をかけて計算されます。計算式は以下のとおりです。

税金=譲渡所得×税率

上記の「税率」は、不動産の所有期間によって異なります。

1月1日において所有期間が5年超の場合は、長期譲渡所得となり、5年以下の場合は短期譲渡所得になります。

短期譲渡所得は所得税率は30%・住民税は9%ですが、これが長期譲渡所得に該当すれば所得税は15%・住民税は5%と大きな節税につながります。

居住用財産の3,000万円控除とは

売却する不動産が持ち主の自宅であった場合、3,000万円の特別控除という特例を使うことができます。

自宅として使っていた不動産を売却した時にしか使えないため、アパートや投資用マンションでは利用できません。

適用条件

自分が住んでいた家屋を売る、もしくは家屋とともに敷地を売ることが前提です。

家屋を取り壊した場合は、譲渡契約までの間に土地を賃貸などに利用した場合は適用できません。

また、売り手と買い手が親子などの特別な間柄ではないことが必要です。

 

すでに転居している場合は、転居後の3年目の年末までの売却であることが必要です。

家屋の取り壊しを行った場合は、取り壊しから1年以内に売却する必要があります。

このほかにも適用条件は細かく指定されているため、詳しくは国税庁のHPでご確認下さい。

 

相続空き家の3,000万円控除とは

平成27年の税制改正によって、相続後に空き家になった自宅を売却しても3,000万円の特別控除が使えるようになりました。

譲渡所得を計算する時に、以下のように3,000万円を控除することができます。

 

譲渡所得=譲渡価額-取得価額-譲渡費用-3,000万円

 

この時点で譲渡所得が0円になれば税金は発生しません。

ただし、適用されるにはいくつかの条件があります。

適用条件

相続空き家の特例に関しては、適用条件が細かく指定されています。

まず、昭和56年5月31日以前に建てられた建物であることが大前提です。それ以降の住宅の場合は適用できません。

上記の条件以外にも一定の耐震条件を満たさないと適用されないため、耐震リフォームをしてから売却する必要があります。

売却代金が1億円を超えると適用できないなど、条件が多岐に渡るため、必ず専門家に相談することをおすすめします。

老人ホームに入居していた場合

要件の1つに「相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であること」とありますが、被相続人が老人ホームに入居していた場合はどうなるのでしょうか。適用される条件の一部を解説します。

  • 被相続人が要介護認定されて相続開始の直前まで老人ホーム等に入所していること
  • 入所から相続開始の直前まで被相続人について一定の使用があり貸付けや事業用等に利用されていないこと

このような条件が満たされることで、老人ホームにいた場合でも特例が適用される可能性があります。

まとめ

今回は、居住用財産を売却した際の3,000万円の特例を2つご紹介しました。

いずれの特例も条件が複雑で、見落としていると特例が受けられない可能性があります。

利用したい場合は、税理士などの専門家にサポートを依頼するのがおすすめです。

相続した土地の一部放棄はできない!相続放棄の基本を解説

f:id:estate_diary:20200824223830j:plain

こんにちは!estate_diaryです。

 

今回は、相続した土地の一部放棄ができるか否かというお話です。

相続財産に価値が低い不動産などが含まれている場合、「一部の不要な財産は放棄できないか?」と考えることがあるかもしれません。

相続財産を一部だけ放棄することはできないのでしょうか。

今回は、相続の手続き方法について解説します。

 

相続のやりかたは3種類

ひと口に「相続」といっても、その方法は1つではありません。

人によっては「財産ばかりでラッキー」と思うこともあれば、「借金しか残っていなくて、そのまま相続したら生活できない」というケースも考えられます。

その場合は「相続自体を放棄する」「借金の分だけプラスの財産を取得する」といった方法も可能です。

以下の3つの相続方法を詳しく見ていきましょう。

  • 単純承認
  • 限定承認
  • 相続放棄

単純承認

単純承認とは、現金や不動産などのプラスの財産と、借金などのマイナスの財産を全て引きつぐ相続方法です。

相続した債務は、相続人が返済する必要があります。

限定承認や相続放棄の手続きを被相続人の死亡から3ヶ月以内にとらない時は、自動的に単純承認したものとみなされる点が注意が必要です。

 

限定承認

限定承認は、現金や不動産などのプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐことです。

債務がプラスの財産を上回っている場合、単純相続した場合は借金を自分の資産から支払わなければいけません。

限定承認であれば、マイナスの資産の額をプラスの範囲内に収めることが可能です。

ただし、被相続人の死亡から3ヶ月以内に家庭裁判所に手続きする必要があります。

 

相続放棄

相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も両方を放棄することです。

相続人の1人が相続放棄した場合、同順位の人がプラスとマイナスの財産を受け継ぐことになります。

同順位に相続人が残っていない場合は、次の順位の人に引き継がれる点に注意が必要です。

相続放棄したからといって、債務そのものが無くなることはありません。債務を引き継いだ人との間にトラブルが発生することも考えておく必要があります。

 

要らない不動産だけを相続放棄することはできない

もしも相続財産の一部が「遠く離れたお腹の農地」のように不要なものであった場合、その財産だけを相続しないということはできるのでしょうか?

結論から言うと、プラスの財産の一部放棄はできません。

相続を放棄する方法として有力なのは「相続放棄」ですが、これは最初から相続人でなかったことになる方法です。

プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄する必要があります。

「一部だけ相続すること」も「一部だけ放棄すること」もできません。

 

限定承認でも一部の相続放棄はできない

限定承認であれば、マイナスの財産の一部について放棄することが可能です。

例えば、500万円の借金と100万円の貴金属が財産として残った時を想定してみましょう。債権者に100万円を返済することで、貴金属を相続することができます。

しかし、プラスの財産である不動産を、一部だけ放棄するような利用の仕方はできません。

 

所有する土地が共有財産の場合

不動産を複数の人が共有で所有している場合、共有者の1人が共有持ち分を放棄することは可能です。

放棄した共有持ち分は、他の共有者に帰属することになります。

なお、単独所有の土地の所有権の放棄は原則としてできません。

寄付をしようとした場合も、利用価値の低い土地は自治体に受け入れてもらえなないことは知っておきましょう。

 

まとめ

今回は、相続財産の一部放棄ができるかについて解説しました。

「Aの土地は欲しいけど、Bの土地は要らないから放棄したい」といった都合のいい相続方法はないということを理解しておきましょう。

相続後に自治体に寄付できる可能性もありますが、価値がない土地の場合は寄付を断れることも十分にあり得ます。

相続した不動産の共有はNG?デメリットと注意点を解説

f:id:estate_diary:20200824225143j:plain

こんにちは!estate_diaryです。

 

今回は、相続した不動産を共有の状態にしておくことが良いのか、悪いのかについての解説です。

相続人が複数いる場合に、遺産をキレイに分割できないことがあります。

そんな時は、相続人全員で共有する形での相続が可能です。

ただし、共有の状態は望ましいものでないことが多いのも事実です。

今回は、相続における共有について解説します。

 

共有とは

共有とは、相続した土地を兄弟などで一緒に所有することです。

相続した土地や不動産が1つだけだった場合など、財産を分割することが難しい場合にできます。

相続した不動産を共有することで、全員で1つの不動産を所有することが可能です。

注意点としては、共有持ち分はあくまでも「権利上のもの」であるということです。物理的に分け合っているわけではありません。

土地を2人で共有しているケースで、北側がAさん、南側がBさんが持っていると物理的に分割されていると考えるのはよくある勘違いです。

 

相続不動産を共有にするメリット・デメリット

相続の共有にはメリットのほかに、いくつものデメリットがあります。

共有のメリット・デメリットを紹介します。

 

メリット:節税効果

居住用の住宅の売却に際しては、さまざまな税制特例を受けることが可能です。

例えば「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が使えれば、売却益のうち3,000万円が非課税です。

共有不動産を売却では、共有者それぞれが特例を利用することができます。

1人が相続して売却するのに比べて節税のメリットが大きいのです。

 

デメリット:処分に同意が必要

不動産を共有にする場合、持分によって1人でできること、できないことが変わってきます。

例えば「土地を不法に占有している人」への明け渡し要求

これは「保存行為」とされ、各共有者が単独で行うことができます。

一方、不動産を第三者に賃貸する行為「管理行為」と呼ばれ、共有者の持分価格の過半数の同意が必要です。

不動産の売却は「変更行為」とされて、共有者全員の同意が必要です。

共有者が1人でも反対する限り、不動産を売却することができなくなるのです。

 

デメリット:登記のし直しが必要

共有持ち分のみを相続した時、単独所有と同様に名義変更をする必要があります。

登記をやったことがない一般の人には手続きが大変に感じるでしょう。

司法書士に頼むことができますが、コストが発生します。

不動産を共有で登記する場合、持分割合や共有者が変更になる度に登記をする必要があるのがネックになります。

 

デメリット:トラブルにつながる

許攸関係を解消して単独所有にするため、共有者全員で遺産分割協議をする必要があります。

協議の参加に非協力的な持分所有者がいる場合、話し合いが難航することになります。

親世代の関係が円満でも、子供世代は円満であるとは限りません。

共有関係は早いうちに解消しておくことで、遺言書を作成して将来的に揉めないようにすることが大切です。

 

共有以外の選択肢

共有者間でのトラブルを回避するために、遺産分割協議を開いて専門家のアドバイスを参考に遺産の分配方法を決めることが大切です。

共有以外の遺産分割の選択肢を紹介します。

 

現物分割

不動産はAさんが相続、現金はBさんが相続といったように、相続した財産をそのままの形で受け取ることです。

それぞれの相続人が単独で所有する点で共有と異なります。

ただし、相続の財産によっては相続人の間で公平に分けられない点がデメリットです。

 

代償分割

誰か1人が不動産を相続し、不動産を相続していない人に一定の現金を支払う方法です。

「不動産を相続したい」と考えている人と「現金を相続したい」と考えている人がそれぞれいる場合に有効な方法になります。

しかし、不動産を相続した人が代償として支払う現金は相続人自身の財産です。

相続人に現金がないと成立しない点が問題になります。

 

換価分割

不動産を売却してお金に換えて、現金を分割する方法です。

被相続人が遺してくれた財産を手放すことや、財産の売却に手間と費用がかかることがデメリットです。

 

まとめ

今回は、相続不動産の共有の問題点を解説しました。

共有者間でトラブルがあった場合、売却も賃貸もできなくなる可能性があります。

共有状態はできるだけ早く解消し、子供たちにトラブルを残さないようにするのが大切です。

農地を相続したら知っておきたい、農地法のこと|農地法第5条とは?

 

f:id:estate_diary:20200620004420j:plain

こんにちは!estate_diaryです。
 

 数回にわたりお話ししている農地法のお話ですが、ひとまず今回で最終回!

農地法第5条についてです。

相続した農地の売却を考えている場合は、買主が用途変更を希望しているケースも考えられてます。

そんなケースで登場するのが、農地法第5条です。

農地の売却を検討している方は、参考になさってください!

 

農地法とは?

毎回お話ししておりますが、農地法とは、国民の食糧を確保するうえで欠かせない農地を将来に渡って保護するための法律です。

国土の狭い日本では、農地は大切な資源です。

そこで国は、無秩序な用途変更や非効率な耕作から農地を守るために農地法を制定しました。

 

第2章(第3条~第15条)に「権利移転及び転用の制限等」という項目が規定されています。

この項目には、売買を含む譲渡や賃貸を行う場合の許可や届け出について必要なことが規定されています。

 

今回の記事では、第5条を取り上げていきます。

 

第5条の内容とは?

農地法第5条は、権利の変動を伴う用途変更を行う際に必要な申請です。

大まかな内容は第4条の用途変更と同じですが、以下の違いがあります。

 

  1. 当該農地の権利に変動(譲渡や売買、賃貸契約)があること
  2. 用途変更工事を譲受人(もらった人や買った人、借りた人など)が行う(発注する)こと

 

 なお、権利が変動する前に用途変更を行い登記簿上の地目変更を完了した農地は、地目変更によって農地ではなくなります。

地目が農地でなくなった後の土地は農業委員会の管轄から離れ、利用や処分を自由に行えるようになります。

 

第5条申請から地目変更までの流れ

第5条申請は、権利の変動を伴う用途変更手続きです。

売買を例に流れを確認しましょう。 

  1. 売主・買主が売買内容に同意し、契約が成立する
  2. 売主・買主の連名で、申請書を作成する(連名ではあるが、用途変更後どのように使用するかなど、ほとんどの書類を買主側が用意します)
  3. 農業委員会へ提出し、必要に応じで都道府県が許可を出す
  4. 許可書を基に、売買代金の決済及び名義変更手続きを行う
  5. 買主は申請書の内容通りに整地・使用し、現況が農地ではなくなったことを農業委員会へ報告する
  6. 一定期間経過後も現況が申請書通りに使用されていることが認められれば、はれて登記簿の地目変更ができます

 

 ここで注意して欲しいのが、4.以降の内容です。

農地法第5条申請は、許可や届け出だけでは地目変更ができません。

許可などが下りた後に利用状況報告が必要で、これを怠ると、いつまで経っても農地のままです。

第5条の申請では、添付書類として「どのように整地するか」「どのように利用するか」を細かく提示します。

 農業委員会や都道府県は許可などを出した後、当該農地が申請通りに整地・利用されていることをちゃんと確認するのです。

登記簿上の地目を早く変更したい場合は、利用状況報告を速やかに行ってください!

ちなみに農地転用許可が下りたにもかかわらず、利用状況報告をせずに放置された農地も稀に存在します。

放置期間の長さによっては、再申請を求められることもあるのでご注意ください。

 

プラスアルファの知識

【現況と登記簿上の地目が異なる場合】

上記例と関連しますが、登記簿上の地目が農地でありながら、現況が宅地や雑種地になっているケースがあります。

過去に農地転用申請が行われた上記のような土地に見られるケースです。

このような土地で所有権移転登記をする場合は、所有権の前に地目変更の登記が必要です。

地目は登記簿の「甲区」(所在地や面積、区分などを表記した項目)の記載事項で、その登記申請は土地家屋調査士の独占業務です。

上記のような土地の譲渡や売買を行う場合は、決済の前に土地家屋調査士へ相談しましょう。

なお、土地家屋調査士に上記のような事情の地目変更を依頼する際は「農地転用受理通知書」の添付で対応してもらうことも可能です。

 

農地を相続したら知っておきたい、農地法のこと|農地法第4条とは?

f:id:estate_diary:20200620003707j:plain

こんにちは。estate_diaryです。

 

数回にわたり農地を相続した方向けのお話をしております。

前回は農地法第3条のお話をしましたので、今回は農地法第4条について解説したいと思います。

「相続=農地法第4条」ではありませんが、相続した農地をどうするか検討する際の参考にしてください!

 

農地法とは?

前回もご説明しましたが、農地法とは国民の食糧調達に欠かせない農地を、将来に渡って保護するための法律です。

農地を守ることが目的であるため、無秩序な用途変更や非効率な耕作を防ぐことなどを目的としています。

 

第2章(第3条~第15条)に「権利移転及び転用の制限等」が規定されていて、売買を含む譲渡や賃貸を行う場合の許可や届け出について定められています。

その中でも第4条・第5条「用途変更」についての規定で、当該農地を農業以外の用途で使用したい場合に必要な申請です。

今回の記事では、第4条を取り上げていきます。

 

第4条の内容とは?

農地法第4条とは、所有している農地を農地以外の目的で利用するために、土地の用途変更を願い出る手続きです。

その内容には、以下のポイントがあります。

  1. 当該農地の所有者に変更がないこと
  2. 農地を農地以外の用途で利用すること
  3. 当該農地の所在場所によって「許可」または「届出」になること
  4. 申請が認められて用途変更すると、登記簿上の「地目」も変わること
  5. 用途変更工事を所有者が行う(発注する)こと

3.と4.について、詳しくご説明します。

  

[3.「許可」と「届出」の違い]

農地法では、当該農地の所在場所が「市街化調整区域」または「都市計画区域外」の場合、申請の種類は「許可」となります。

一方、当該農地が「市街化区域」に所在する場合は、申請の種類は「届出」となります。

農地転用とは農地を農地以外(建物を建てたり、駐車場や資材置き場)で利用することが目的です。

そのため、開発が前提の市街化区域に所在するのであれば、許可は不要なので「届出」でOK。

反対に無秩序な開発の抑制を目的としている市街化調整区域や、開発計画すら立てられていない都市計画区域外では「許可」がないとNG。

と理解すると分かりやすいでしょう。

 

[4.地目変更について]

土地の登記簿を見てみると「甲区」「乙区」に分かれています。

甲区には、その不動産に関する表記(所在地や面積、区分など)が記載されています。

乙区には、その不動産の権利に関する表記(所有者や取得理由、抵当権や抵当権者)が記載されています。

農地法第4条申請の後に変更される地目は甲区の記載事項なので、農地転用を行った場合は、登記簿の甲区を変更する手続きをしてください。

 

ちなみに、登記簿の乙区の申請は司法書士の業務範囲ですが、 甲区(表題部分)は土地家屋調査士の業務範囲です。

司法書士さんでは対応できませんので、依頼する際は注意しましょう!

 

第4条の申請先

農地法第4条の申請は、許可・届出ともに、当該農地を管轄する農業委員会窓口です。

届出の場合は農業委員会が受け付けから完了まで担当しますが、許可の場合は、都道府県が許可権者となります。

 

用途変更手続きの注意点

ここまで、農地法4条申請による「用途変更」についてお話ししましたが、用途変更を申請する前に注意すべき点があります。

それは、当該農地が「農業振興地域内の農地」であるか否かです。

農業振興地域は、そもそも農業以外の利用を禁止している区域です。

そのため、農業振興地域のままでは用途変更が認められることはありません。

農業振興地域内の農地を用途変更したい場合は、まず「農振除外」ができるかどうかを確認してくださいね!

 

 まとめ

農地法第4条とは、所有者は変わらず、農地を農地以外の用途に変更する手続きです。

農業振興地域内の農地などは、農地保護の観点から用途変更できない場合もあります。

もともと農業を営まれている方は農地法にもお詳しいかと思いますが、相続で農地を取得した場合などは、農地法に馴染みのない方もいらっしゃると思います。

農地の用途変更を希望する場合は、一度、専門の不動産業者へ相談してみてください!

農地を相続したら知っておきたい、農地法のこと|農地法第3条とは?

 

f:id:estate_diary:20200614013839j:plain

こんにちは!estate_diaryです。

先日は相続した農地の売却と、一般的な売買での手続きの違いについてお話ししました。

今回はその続き。

「農地法第3条」について詳しく解説したいと思います。

相続と直接関係はありませんが、相続した土地の活用法を考える上で、参考にしてください!

 

農地法ってどんな法律?

農地法とは、国民にとって必要な農業を行うための土地を、将来に渡って保護するために作られた法律です。

国土の限られた日本においては、農地を「限られた資源」と捉え、無秩序な用途変更や非効率な耕作を防ぐなどの目的があります。

 

【農地法の目的】

・利用関係の調整

・耕作者の権利取得の促進

・農地の農業上の利用の確保

・耕作者の地位の安定

・国内の農業生産の増大

・国民に対する食料の安定供給の確保

など。

 

【権利移動・転用に関する規定】

農地法の中でも第2章(第3条~第15条)は「権利移動及び転用の制限等」となっていて、売買を含む譲渡や賃貸を行う場合に関係してきます。

不動産業者が関わることが特に多いのは、第3条~第5条で、売買を手掛けるときには熟知しておく必要があります。

今回の記事では、第3条を取り上げていきます。

 

第3条はどんな内容なの?

農地法第3条とは農地を他人に譲渡・賃貸などして、権利を譲る際に必要な許可申請です。

権利の譲受人が農業に従事し、当該土地を農地として利用する場合に適用されます。

つまり、農地を農業従事者に譲り、農地のままで使ってもらうときに適用される法律です。

申請手続きに関する概要は、下記のとおりです。

 

【申請先】

農地の所在する市町村の農業委員会

 

【許可権者】

農地の所在する市町村の農業委員会

 

【農地の定義】

「耕作の目的に供される土地」と定義されており、登記簿上の地目によって判定されるものではありません。

しかし実際の不動産売買の現場では、現況が耕作の目的に供されていない土地でも、登記簿上で「田」や「畑」となっていれば申請を求められるケースが見られます。

現況がただの空き地に見えても、登記簿上の地目が農地である場合は農業委員会へ確認した方が無難です。

 

【現況と登記簿上の地目が異なる場合】

上記例とは少し違いますが、登記簿上の地目が農地でありながら、現況が宅地になっているケースがあります。

この場合は所有権移転登記を行う際に「農地転用受理通知書」の添付が必要です。

 

※農地法第3条は、農地を農地として利用する場合に必要な許可申請です。

そのため現況宅地の土地を譲渡後に農地として使うことは考えにくく、この項目の説明は該当しないと思われます。知識の一つとしてご理解ください。

 

【該当事案】

・所有権移転をする場合

・地上権、賃借権等の設定や移転をする場合

 

【その他、規制の適用範囲】

現況が耕作の目的に供されていない場合でも、下記の土地は農地法の規制の適用範囲となります。

・休耕地

・果樹園

・竹林の育成地

・林業種苗地

・蓮池

 

 相続との関連

通常、農地の権利に変動がある場合は、農地法による許可申請が必要です。

しかし各々の意思に基づいて行われる譲渡や賃貸借と違い、相続は譲受人の意思とは無関係に発生する権利変動です。

そのため相続で農地を取得する場合には、農地法の許可は必要ありません。

しかし相続した農地を処分する際には、農地法のお世話になるはずです。

例えば農地を農業従事者に売却し、そのまま農地として耕作に利用する場合には農地法第3条の許可が必要になってきます。

農地を相続するだけならさほど意識する必要はない農地法ですが、相続のその先に何をするかによって、必要性が出てくる知識です。

相続人が農業を営んでいる場合には農地法を熟知されているかもしれませんが、農業経験のない方なら全くご存知ない可能性もあります。

 

相続で農地を取得した場合は、専門の不動産業者に活用方法などを相談してみてはいかがでしょうか?

 

 

 

相続した農地を売却する。通常の売買との違いはあるの!?

 f:id:estate_diary:20200614013017j:plain

こんにちは!estate_diaryです。

今日は現在進行中の売買案件を基に、相続した農地を売買するまでの流れを解説致します。

土地売買において農地は特別に保護された存在ですが、相続の場合は通常の売買での取得と状況が異なるため、必要な手続きも違います。

通常の売買と相続の違いを確認しながら、理解してもらえると嬉しいです!

 

農地を売買で取得する(通常の流れ)

農地の所有権を移転する場合、通常は以下の2つのパターンが考えられます。

  【その1:売買した農地を農地として利用する】

農地とは、そもそも農業のために使う土地です。そのため農業を営む人(個人や法人)に売却され、そのまま農地として使われるのが当然の流れです。

そのため農地法による手続きもそれほど厳しくはなく、以下の申請を行います。

(農地法第3条申請)

 農地法第3条とは、農地を耕作する目的で、所有権を移転したり賃借する場合に必要な申請です。

提出先は農地が所在する市町村の農業委員会で、譲渡人、譲受人の双方が申請者となります。

申請者の住所が農地の所在市町村と同じ場合には農業委員会が許可権者となりますが、異なる場合は都道府県知事が許可権者となります。

原則として、農家でない者が農地を取得することはできませんので、以下の条件が求められます。

・取得した農地を含め、取得者が所有する農地の全てを耕作すること(弁部効率利用条件)

・必要な農作業に、取得者が常時従事すること(農作業常時従事要件)

・通勤距離を鑑み、農地の効率的な利用・耕作ができること(農作業常時従事要件)

・経営する農地の面積が、該当する市町村の下限免責をクリアしていること(下限面積要件)

 

【その2:売買した農地を農地以外で利用する】  

登記簿上で「田」や「畑」となっている土地でも、実際は耕作を行っておらず、立地的にも宅地や駐車場として利用したい場合があります。

そのように農地を農地以外の目的で利用し、なお且つ所有権の変更を伴う場合に行うのが以下の申請です。

(農地法第5条申請)

農地法第5条とは、農地を農地以外で利用することを目的に権利移転(売買や賃貸等)する時に必要な申請です。

提出先は農地が所在する市町村の農業委員会で、申請者は譲渡人・譲受人の双方です。

土地の利用目的が耕作ではないため、農業を生業としない者でも取得することができます。

以下の条件が求められます。

・概ね1年以内の利用計画があること

・購入資金が確保できることを証明できる(預金残高証明や融資証明等)

・農地を転用する正当な理由がある

など。

 

農地を相続して取得する

 売買の場合と異なり、相続では譲受人(相続人)の意思と関係なく農地を譲り受けることになります。

そのため農地法の適用を受けることなく、農地を取得できます。

土地を相続するためにいちいち農地法の申請が必要だと、相続手続きの円滑な処理ができず、相続人にとって負担が大きいです。

そのため農地であっても、相続で取得する場合は例外的に申請が不要とされているのです。

 

 相続した農地を売却する場合に必要な手続き

相続した農地を売却する場合は、農地法の申請を買主が行うのが一般的です。

売買契約書に「売主は申請手続きに協力する」という趣旨の文言が付され、申請書の記入などが求められます。

また、登記簿の所有権欄に相続を経由した旨の記載が求められますので、所有権移転登記に必要な「遺産分割協議書」などは、早めに作成しておきましょう。

 

まとめ

相続によって農地を取得した場合は、売買などで取得する場合に必要な農地法の申請手続きは不要です。

しかし売却する際には、登記簿で「相続があった」旨の記載が要求されます。

また、売買契約自体にも「真の所有者である」旨の証明は必須ですので、遺産分割協議書などの「相続情報証明書類」は、早めに準備しておきましょう。

 

民法改正のポイント|不動産相続関連その1:配偶者居住権

f:id:estate_diary:20200507125940j:plain


こんにちは!estate_diaryです。

 

2020年4月から、改正民法が施行されました。

明治憲法制定以来大きな改正がなかった民法だけに、不動産業界でもここ1、2年、改正に関する情報が頻繁に入ってきます。

私たち不動産業界では、改正によって影響を受ける分野がいくつかありますが、その中でも「相続法」は仕事に直結する重要な分野です。 

 

不動産・相続の専門家としては外せない法律です!

 

そこで自分自身の勉強も兼ねて、不動産相続に関連する「民法改正」を解説したいと思います。

今回は「配偶者居住権」です。

居住建物の所有者が亡くなったとき、残された配偶者が経済的に不利な状況になるのを防ぐ新しい法律です。

持ち家に居住されている方には是非知っておいてもらいたい新法ですので、ザックリではありますが、頭の片隅に入れておいてください!

「配偶者居住権」ってなぁに?

 「配偶者居住権」とは、ある人が亡くなったときに、その亡くなった人(被相続人)の所有する建物に配偶者が住み続けられるように、居住の権利を保護する施策です。

配偶者居住権は「配偶者居住権」「短期配偶者居住権」の2種類があり、どちらも今回の民法改正で新設されました。

 

改正前の配偶者居住権

改正前の民法では遺産分割で配偶者が居住建物を相続すると、相続財産の計算上「一番高価な遺産」を受け取ったことになるケースが多く、その他の預貯金などを受け取れない事態が起きました。

「高価な不動産を相続するのだから、取り分は充分でしょ!だから預貯金は譲ってちょうだい」と、他の相続人に言われてしまうのです。

その結果、居住建物を相続した配偶者が生活に困窮する事例が頻発し、社会問題となったのです。

改正後の配偶者居住権

2020年4月に施行された改正民法では、上記の問題を解決すべく2つの配偶者居住権新設❞されました。

 

①配偶者居住権

配偶者に終身または一定期間、居住建物を使用する権利を認めるものです。

これは遺産分割の選択肢であるだけでなく、遺贈によっても配偶者に居住権を取得させることができます。 

 

<適用要件>

  •  被相続人所有の建物が対象
  • 相続開始の時に、配偶者がその建物に居住していること

 

②配偶者短期居住権

配偶者に短期的に居住建物を使用する権利を認めるものです。

その期間は下記の「いずれか遅い日」までの間です。

  1. 遺産分割が行われ、当該建物の帰属が確定するまでの間
  2. 相続開始の日から6ヶ月を経過する日

この権利が確保されることで、被相続人が当該建物を配偶者以外の者に遺贈した場合でも、配偶者は最低でも6ヶ月間、無償で居住建物を使用することができます。

 

<適用要件>

  • 被相続人所有の建物が対象
  • 相続開始の時に、配偶者がその建物に無償で居住していること

 

【遺贈】

遺言により財産を贈与すること。これによって相続人以外の者に財産を与えることができますが。また、相続人に対して遺言を残す場合にも「遺贈」と言います。

 

 

「配偶者居住権」のまとめ

配偶者居住権をまとめると、下記の通りになります。

  1. 配偶者居住権には「終身または一定期間」権利を保護する「(長期的な)居住権」と、「建物の帰属が確定するまでまたは6ヶ月間」権利を保護する短期居住権が存在する。
  2. どちらも当該建物が、被相続人所有であること。
  3. どちらも、相続開始の時に当該建物に居住していること。

 

最後に

 

居住建物の所有者が亡くなった時、残された配偶者がその建物に住み続けるのは「当たり前」のようにも思えます。

しかし法的にその権利が守られてきたわけではありません。

不動産を扱う仕事をしていると、そんな理不尽に出会うことも少なからずありました。

しかし今回の民法改正によって配偶者の権利が大幅に守られるのは、残りの人生の安心が増えて良いことだと思います。

大黒柱に先立たれて将来が不安になってしまう。

そんな人が少しでも減るよう、微力ながら情報発信をしていきたいと思います!

 

民法改正のポイント|不動産相続関連その2:持ち戻し免除

f:id:estate_diary:20200507131228j:plain

 

こんにちは!estate_diaryです。

 

前回に引き続き、民法改正に関する解説をしていきたいと思います。

民法改正の解説と言っても民法全般を解説するのは大変なので、誠に勝手ながら不動産業に関係のある分野を解説中です!

今回は第2弾として「相続法」の中から「持ち戻し免除」に関する改正内容をお伝えいたします。 

 

「持ち戻し」ってなぁに?

「持ち戻し」なんて日常生活ではなかなか聞かない言葉ですね。

私もこの仕事をしていなければ、おそらく出会わなかった言葉だと思います。

「持ち戻し」とは、生前贈与で受け取った財産を遺産分割の総額に加算することです。

 

【例】

被相続人A(亡くなった人)が生存中に、後の相続人となるBに財産の一部を贈与(生前贈与)したとします。

被相続人Aが亡くなって財産分与をするとき、すでに財産の一部を受け取っているBと、B以外の相続人が同じ割合で遺産分割を受けるとB以外の相続人が損をしてしまします。

そのためBがAから受けた生前贈与は「特別受益」として扱われ、原則として遺産分割する財産の総額に加算されます。

この加算する行為を「持ち戻し」と言うのです。

 

【特別受益】

相続人が複数人いる相続において、一部の相続人が被相続人から個別で遺贈された(受け取った)財産が特別受益です。一部の相続人だけが生前に贈与を受けているにも関わらず、均等に遺産分割を行ったのでは、他の相続人にとって不公平です。特別受益とは共同相続人の公平を保つ観点から生まれた概念なのです。

 

原則として、共同相続人の中に生前贈与を受けた者がいる場合は、その財産は特別受益として扱われます。

そのため現存する財産に特別受益を加算したものが相続財産の総額とされ、そこから各相続人の相続額が割り出されます。

特別受益を受けた相続人は、相続額から特別受益分を差し引いた額を受け取ることになります。

 

持ち戻しの免除

生前贈与を相続財産に加算する「持ち戻し」ですが、実は免除することができます。

生前贈与が特別受益として相続財産に加算されると、受贈者に対して「他の相続人よりも多く財産を譲りたい」と思った被相続人の気持ちが台無しになってしまうからです。

この被相続人の思いを実現させる制度が「持ち戻しの免除」なのですが、今回の民法改正で、その「意思表示」に関して新たな項目が追加されました。

改正前の持ち戻し免除

元々の法律では、被相続人が贈与等によって財産を分与した場合、その財産を特別受益として取り扱わない旨の意思表示が必要でした。

その意思表示を「持ち戻し免除の意思表示」と言い、この意思表示がされたときは、遺産分割において持ち戻し計算を行わないことが認められていました。

 

改正後の持ち戻し免除

改正後の法律では、持ち戻し免除の意思表示において「推定」が働く要件が新設されました。

一方の配偶者が他方の配偶者に居住用不動産の贈与等を行った場合、持ち戻し免除の意思表示を行っていなかったとしてもその意思表示があったもの」推定するという内容です。

この推定は、婚姻期間が20年以上の夫婦間で相続が発生した場合に適用されます。

この改正で遺産分割における財産の計算上、当該居住不動産の持ち戻しが原則不要となりました。

この規定により生存配偶者の相続分の保護が図られ、生活が困窮することを防ぐ効果が期待されます。

 

「持ち戻し免除」のまとめ

持ち戻し免除は以前から存在する制度でしたが、遺贈者の「持ち戻し免除の意思表示」が要件であったことからハードルの高いものでした。

しかし今回の法律改正で、20年以上の婚姻期間があれば免除の意思が「推定」されるようになりました。

これは法律の専門知識を持っていない方でも叶う要件で、ハードルもかなり下がったと言えます。

ただし、遺産分割のときにこの制度を知らなければ活用できません。

万が一、居住不動産を所有する配偶者が亡くなってしまったときは、専門家を交えて遺産分割協議を行うことをお勧めします。

 

 

相続人不存在の不動産はどうなるの?国の対応と相続不動産の帰属

f:id:estate_diary:20200413153117j:plain

不動産業者として相続の勉強をしていると、その奥の深さに学習意欲をかき立てられます。

今回は不動産業とはあまり関係がないのですが、相続人が誰もいない不動産の行く末を考えてみましょう。

 

相続人不存在の相続財産

「相続人不存在」とは、誰かが亡くなったとき「その人の財産を相続する人が誰もいない」という状態です。

相続する人がいなければ、残された財産は行き場を失ってしまいます。

さて、これらの財産はどうなってしまうのでしょうか?

 

【一般的な財産の行方】

相続人のいない相続財産は、検察官や利害関係人の申し立てによって選任された「相続財産管理人」によって処分されます。

相続財産管理人の選任は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てて行います。

専任されればその旨を公示し、以下のような役目を果たします。

  1. 戸籍などを取り寄せ、相続人がいないか捜索する
  2. 相続財産の換価
  3. 相続債権者への支払い
  4. 受遺者(遺言によって財産を譲り受ける人)が遺贈を受けるかの意思確認
  5. 特別縁故者への遺産分与

これらの作業を全て終えても財産が残った場合、残りの財産は国庫へと帰属します。

  

【他の財産とはちょっと違う不動産の事情】

一般的な相続財産はおおむね上述の作業によって処理されますが、不動産にはちょっと違う事情が存在します。

一般的な財産は単独所有がほとんどですが、不動産の場合「共同所有」という概念がありあます。

もちろん全ての不動産に当てはまるわけではありませんが、意外と多いので注意が必要です。

 

 相続人不存在の不動産に「共有者」がいる場合

 

民法255条には、共有者が死亡して相続人がいない場合、その持ち分が他の共有者に帰属する旨の規定があります。

その規定に従うと、相続人のいない不動産は、他の共有者が引き継ぐことになりそうです。

民法255条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がいないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。 

 

「共有者」と「特別縁故者」はどっちが優先?

相続人不存在の不動産に共有者がいた場合、不動産はすんなり共有者のものになるのでしょうか?

実はそうでもなさそうです。

相続不存在の場合、相続財管理人は「特別縁故者」が名乗り出ないか調べます。

この特別縁故者は「相続人」の身分を有していない第三者なのですが、生前、故人と内縁関係にあったり、故人を献身的に看護したりなど、特別な事情により遺産を受け取る権利のある人です。

民法958条の3(抜粋)

前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めていた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、それらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

 

相続人はいないが特別縁故者がいる相続不動産の場合、共有者と特別縁故者、どちらが優先されるのでしょうか?

 

判例によると、共有者と特別縁故者が存在する場合、特別縁故者が優先して遺贈を受けられるそうです。(最高裁判例平成元年11月24日)

従って共有者は、相続人も特別縁故者もいない場合に不動産を取得できることになります。

判例趣旨

共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続きが終了したときは、その持分は、民法九五八条の三に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされないときに、同法二五五条により他の共有者に帰属する。(反対意見がある。)

 

相続人不存在不動産に対する国の対応

 現在、引き取り手の不在や所有者不明で国庫に帰属されている不動産は、相当数存在しています。

それらの多くは利用価値が低く、管理コストの増大が問題視されています。

国はこれら管理費や不明の所有者を捜索する費用を抑えるため、将来的に国庫帰属となる可能性のある財産に対して、死因贈与契約を締結するなどの取り組みを行っています。

しかし相続人不在などの不動産がスムーズに国庫帰属されても、それはストックされた不動産を活かすことにはつながりません。

引き取り手のない不動産が活躍できるよう、多様性のある世の中になることを願うばかりです。

相続した不動産は売るべき?貸すべき?それぞれのメリットとデメリット!

f:id:estate_diary:20200413004618j:plain
相続した不動産を売るのか貸すのか?

これは永遠のテーマとも言える問題ですが、不動産業を営んでいると必ず相談されることです。

相続した不動産をどう活かすのか?その答えはケースバイケースですが、悩んでいる方の方向性が決めやすくなるよう「売る」「貸す」それぞれのメリット・デメリットを解説いたします。

 

不動産を売却する場合のメリット

不動産を相続したとき、まず思い浮かぶ選択肢が売却です。

売却にはどんなメリットがあるのでしょうか?

 

■まとまったお金が入ってくる

所在地や広さによっても違いますが、多くの不動産の場合、売却すればある程度のまとまったお金が入ってきます。

 

■税金などの維持費が掛からない

地目や所在地によっても金額に差はありますが、不動産を所有していると毎年「固定資産税」の支払い義務が発生します。

売却すれば固定資産税の支払いや、その他の維持費も掛からなくなります。

 

■管理の手間が掛からない

不動産を所有していると、さまざまな労力が必要です。

建物であれば古くなった箇所を修繕費しなければなりませんし、土地であれば草刈りなどの手入れが必要です。

売却して不動産を手放すと、これらの負担から解放されます。

 

不動産を売却する場合のデメリット

メリットがあればデメリットもあります。

不動産を売却する時にはどんなデメリットがあるのでしょうか?

 

■売るタイミングによっては損をする

売却をためらう一番の理由はこれじゃないでしょうか?

不動産を売却したあと、地価が高騰するケースがあります。

1年くらいで大幅に変わることは稀ですが、都市部に近い場所では5年~10年で大幅に値上がりするケースもあります。

 

■意外と掛かる売却費用

不動産売却には仲介手数料や登記費用、測量費用や整地費用など、高額の費用が掛かります。

これらの費用は売却代金から賄うこともありますが、先に整地をして売り出す場合は、手持ち金で工面することもあります。

 

■融資利用ができなくなる

不動産を所有していると、それを担保に融資を受けることができます。

しかし売却して完全に手放してしまうと、担保として利用できなくなります。

 

不動産を貸す場合のメリット

相続した不動産を「売却せずに運用したい」と考える方も多いと思います。

では不動産を貸し出して運用した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?

 

■継続的に収入が得られる

不動産を貸す最大の理由はこれでしょう。

不動産を貸し出すと、決まった家賃が定期的、継続的に得られます。

立地や物件の種類によっては高額の家賃収入が得られることもあります。

 

■子供に財産を残せる

収入を得ながら不動産を所有できるので、将来、子供に財産を残すことができます。

 

■売るタイミングを図れる

いずれ売却を考えている場合、収入があれば売り急ぐ必要がありません。

地価の動向や地域の需要を見極める余裕ができます。

 

不動産を貸す場合のデメリット

貸し出す場合にも、当然メリット・デメリットの両方があります。

不動産を貸す場合のデメリットを見てみましょう。

 

■借り手がいないリスク

賃貸経営でまず心配なのが、借り手がいるかどうかです。

どれだけ高い家賃設定をしても、借り手がいなければ1円も入ってきません。

今の日本では、古い物件や地方の空き家が社会問題になっています。

 

■維持費が掛かる

賃貸物件として貸し出す前に、傷んだ箇所をリフォームする必要があります。

最近では「自由にリフォームできる物件」として現状貸しするケースもありますが、一般的に浸透しているとは言えません。

 

■管理義務が発生する

賃貸経営をする場合、ほったらかしで運営できるわけではありません。

毎月家賃を回収したり、未払いの入居者に催促したり、街灯などの設備管理もしなくてはなりません。

多くのオーナーさんがこれらの管理を不動産会社に依頼していますが、もちろんタダではありません。

賃貸経営をするには、それなりの管理負担が発生するのです。

 

「自分の場合はどうしたいのか」を考える

相続した不動産を売るのか貸すのか?

その答えを出すためには「自分がどうしたいのか」方向性を考える必要があります。

・例えば別の場所に新居を購入予定な場合、売却してまとまったお金を手に入れる方が都合がよいでしょう。

・賃貸経営を生業としたいのであれば、相続した不動産を運用するという選択になるでしょう。

しかし、賃貸経営は「ほったらかしておいても勝手に家賃が入ってくる」なんて簡単なものではありあません。

・将来に渡って所有していたい理由がなく、現時点で納得できる地価であれば、売却もありだと思います。

 

「何のために、どう活かしたいのか?」

ご自身のお仕事やご家族の将来、不動産の利用価値など、一つ一つ考えることで答えが見えてくると思います。