相続時精算課税制度とは?どんなメリットがあるの?

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こんにちは!estate_diaryです。

 

「相続時精算課税制度」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

 

「税金をかけずに贈与できる!」とか「節税になる!」とか、そんなイメージを私も持っていました。

 

しかし実際はどのようなものなのでしょうか。

 

今回はそんな相続時精算課税制度について解説していこうと思います。

そもそも「相続時精算課税制度」とは?

ではまず最初に相続時精算課税制度の基本的な内容を知っておきましょう。

  • 60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫への贈与の場合
  • 2,500万円までは贈与税がかからない
  • 相続発生時に課税

つまり、身内同士の贈与なら「そのときは」贈与税がかからず、相続発生時に税金を払ってくださいというものです。

 

通常であれば贈与税というのは年間で110万円までは控除されるのですが、年配の親から子や孫へ不動産など金額の大きいものを受け継ぐのにいちいち課税されてしまいます。

 

そうならないためにも、2500万円までの贈与であれば贈与税をかけずに贈与しておいて、相続が発生したときに課税しますというものです。

相続時精算課税制度のメリット

相続時精算課税制度を使うことによるメリットは、やはり子や孫の成長に合わせて贈与できることです。

 

例えば子が結婚して孫が生まれたときに、余っていた土地を贈与しようと思ったときに、ものによっては莫大な贈与税がかかってしまうこともあります。

 

かと言って相続が発生するのを待っているのではいつになるかわかりません。

 

家族のライフステージの変化に合わせてベストなタイミングで大きな贈与をすることができるというのが、相続時精算課税制度のメリットのひとつです。

 

また、相続が発生するころには確実に地価が上がっていることが分かっているような不動産であれば、相続時精算課税制度を使って得する場合もあります。

 

2000万円の不動産を贈与したものが、相続発生時に倍の4000万円になったとしても相続発生時に課税されるのは贈与時の価格である2000万円となります。

 

しかし逆に値段が落ちてしまえば大損することもあるので、あまりこれを期待して相続時精算課税制度を使うのはオススメできません。

実は節税ではない!

さて、何度も言いますが「相続時に清算して課税します」という制度なので、決して節税に効果があるわけではありません。

 

「2500万円まで贈与税がかからない!」

 

と聞くととてもインパクトがあるので、つい節税効果を期待してしまう方もいるのかもしれませんが、相続時精算課税制度を使ったところで実際の相続税とはほとんど差がありません。

 

また、一度相続時精算課税制度を適用すると、その人からの贈与はずっと相続時精算課税制度が適用され続けます。

 

つまり通常の暦年課税に戻ることができないので、場合によってはその面からも損してしまう可能性もないわけではありません。

まとめ

相続時精算課税制度は、読んで字のごとく「相続時に清算して課税します」という制度です。

 

そのため、節税などに効果があるわけではなく、家族のライフステージの変化などに合わせて負担なく贈与が行えるというまた違った種類の効果があると言えます。

 

そういった意味ではとても意味のある相続時精算風制度を、しっかりと理解しておきましょう。

不動産の相続税評価額ってどう決まるの?

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こんにちは、estate_diaryです。

 

相続する遺産の中に不動産が含まれていることもあるかと思いますが、その不動産自体の価値はどれくらいあるのでしょうか?

 

不動産にもピンからキリまであるので、不動産の価値を知っておかないと莫大な相続税がかかってきたりする可能性もあります。

 

今回は相続する不動産が一体どれくらいの価値があるのか、相続税としてどれだけかかってくるのかなど、不動産の評価額について解説していこうと思います。

土地の評価をする「路線価方式」

路線価とは、「この道路に面している土地はこの値段ですよ」ということを表したものであり、国税庁のHPなどでも確認することができます。

 

路線価に自分の所有する土地の面積を乗ずることによって土地の評価額を算出することができます。

 

例えば路線価に「150(×千円)」と記載されていて、自分の所有する土地が200㎡なのであれば、3000万円ということになります。

建物の評価をする「固定資産税評価額」

 毎年4,5月ごろになると建物の所有者に対して送られてくる固定資産税の納税通知書というものがあります。

 

これは固定資産税課税台帳を元にして決定されているもので、その土地の立地や用途などを考慮して納税額が算出されます。

不動産の相続税評価額はその80%

もちろん、上記の二種類だけでなくもっと複雑な調査や計算を経たうえで算出される不動産の相続税評価額ですが、大体上記の価格から80%ほどに落ち着くことが多いとされています。

 

基本的に不動産というものの性質上、購入するにも売却するにもあれこれと手続きが必要になり、お金も時間もかかってしまうものです。

 

そういった手続き上の不便さなどがあるものと、現金そのものを同じ価値と考えて相続税として算出するのはかわいそうだということで、考慮したうえでの80%という考え方となっています。

まとめ

不動産の相続税評価額は、土地と建物で違う評価方法で算出されます。

 

土地の評価方法は四種類または五種類ほどあり、それらを総合的に考慮した額が評価額となりますが、一般の方が手軽に調べられる方法の一つとして路線価を紹介させていただきました。

 

建物についても様々な要因で評価額は変わりますが、固定資産税の納税通知書は普段さんを所有しているのであれば確実に送られてくるものなので一つの指標となります。

 

相続する遺産の中に不動産が含まれているケースは全体の40%とも言われています。

 

不動産がどのように評価されてどれくらいの評価額になるのか、おおざっぱにでも把握しておくことが、節税や揉め事の回避に繋がります。

葬儀費用は誰が出す?相続財産から出してもいいの?

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こんにちは、estate_diaryです。

 

今回は、相続が発生したときに問題になりやすい葬儀費用について解説していきます。

 

相続が発生したということは、誰かが亡くなるということなので、相続のことを考えるとともに葬儀についても考えなければなりません。

 

ここで、葬儀についての考え方や、問題となりやすいことをおさらいしておきましょう!

葬儀費用は誰が負担する?

さて、一番最初に議論になるのが誰が葬儀費用を負担するのかということです。

 

  • 遺産を引き継いだ相続人全員で同じ金額を出し合う
  • 相続の割合に応じて負担分を決める
  • 相続は関係なくこういうものは長男が出すものである
  • 長男次男関係なく家業を引き継いだ者が出す

 

このように様々な考え方があると思いますが、実はこの中の全てが正解です。

 

つまり、葬儀費用を誰が負担するかということについては明確なルールはなく、誰が出しても良いことになっています。

 

確かに、相続が発生すると遺産が転がり込んできて得をする相続人もいるかもしれません。

 

それならば感謝のしるしに葬儀費用くらいは負担してあげてもバチはあたりませんよね。

 

基本的には長男が葬儀費用を負担?

長男が葬儀費用を負担しなければならないというのは、古くからある風習のひとつです。

 

それには、昔の相続に関する制度である「家督制度」が関係しています。

 

すでに廃止された法律ですが、家督制度とは「長男が全ての財産を相続する」というものでした。

 

長男が全ての財産を相続する代わり、喪主となり葬儀を開くのが日本の風習であり長男の務めのひとつでした。

 

しかし現在の法律では兄弟の相続割合は同等です。

 

長男でも次男でも同じだけを相続するにも関わらず、長男が喪主となり相続費用を負担するという部分だけが風習として残ってしまっているわけですね。

 遺産から葬儀費用を出すことは可能?

遺産から、というのはつまり亡くなった被相続人のお金を使って葬儀を挙げるということです。

 

葬儀費用は規模や宗派などによっても異なると思いますが、数十万円から数百万円ものお金が必要になります。

 

しかし普通の生活を送っていて突然それだけのお金を出すというのは簡単ではありません。

 

どうせ後で分配されるなら被相続人の遺産から葬儀費用を出して、その残りの金額を分配すればいいと考えますよね。

 

しかし当然ながら被相続人が死亡した場合、同時に金融機関は故人の口座を凍結させてしまいます。

 

そのため被相続人の遺産から葬儀費用を出すことは基本的にはできないと考えられます。

 

しかし、相続人全員の同意書を提出したり、金額の上限を設定した上であれば引き出すことも可能です。

 

葬儀費用でお困りの方は被相続人の預金先の銀行に問い合わせてみるとよいでしょう。

まとめ

葬儀費用については、遺産分割協議とはまた別で揉めてしまいがちです。

 

誰が負担するべきか、どれだけの割合で負担するべきかしっかり話し合いましょう。

 

一定の手続きを経れば遺産を引き出すことも出来るので、被相続人の利用していた銀行に問い合わせてみましょう。

独身者が遺言書を作るべきケースとは?(後半)

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今回は前回からの続きで、独身者が遺言書を作るべきケースなどについて見ていきたいと思います。

 

自筆証書遺言書の書き方

自筆公正証書遺言は手軽に作成できる反面、決められた方式をしっかりと守らないと無効になる恐れがあります。

かならず全文、日付、氏名を自筆で書かなければいけません。押印も必要です。
このうちどれが1つでも抜けると無効になります。

 

紙とペンに関しては特に制限はありません。
通常は検認や相続手続きの際にコピーしやすいようA4かB5サイズの保存にたえうる紙を使用します。
ペンも鉛筆ではなくてボールペンや万年筆、サインペンなどを使用しましょう。

 

書き間違いや内容訂正に関しては法律で細かく加除訂正の方式が定められています。
1か所だけならまだしも、複数の部分を書き間違えた場合は最初から書き直したほうがよいでしょう。

 

封印をするかどうかは自由です。ただ変造・汚損を防ぐためにしておいた方がよいでしょう。
封筒にはわかりやすいように「遺言書在中」と書いておきます。

封筒の裏には遺言書の作成年月日を書き署名・押印、さらに封印します。
さらに死後かってに開封してしまわないように「本遺言書は遺言者の死後未開封のまま家庭裁判所に提出のこと」などと添え書きしておくとよいでしょう。

 

 

内縁の相手に譲る遺言書の文例

 

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内縁の相手に財産を譲りたい場合は、相手の住所、氏名、生年月日と遺贈する財産を特定して明記します。

 

相続人がいない場合や遺族が兄弟姉妹だけの場合は、内縁相手に全財産を譲るという遺言をのこしても遺留分を請求される心配はありません。

 

またトラブルを防ぐためにも遺言執行者を指定しておいたほうがよいでしょう。

 

ペットの世話を条件にした遺言書の文例

 

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ペットの世話を依頼する場合は上記の文例の様に、遺贈の条件を明記します。できれば遺言執行者も指定しておきましょう。

当然ながら自筆証書遺言の場合は「日付、署名、押印」は必須です。

 

公正証書遺言書の作成方法

すでに解説した通り、自筆公正証書遺言は手軽に作成できますが確実性に欠けるので、希望通りに遺言が実現されるのか不安がのこります。

その点、公正証書遺言は安心かつ確実に遺言を実現することができます。

 

確かにいくらか費用はかかりますが、自分で遺言書を作成するより簡単な場合があります。
自筆で全文書く必要がありませんし、文面も一字一句方式通りに書くよう注意する必要もありません。

遺言内容の趣旨を伝えさえすれば、あとは公証人が文面を作成してくれます。
要式不備で無効になる心配や保管に関する心配もありません。

 

まずは事前準備

どの種類の遺言書についてもいえますが事前準備は大切です。
まずは財産を譲りたい人や財産の内容を確認していきましょう。

 

遺言書では財産を譲る相手や財産について正確に記して特定する必要があります。
財産を譲りたい相手の氏名、住所、生年月日を確認するために住民票を準備しておきます。
また譲りたい財産についても財産の目録を作成しておきましょう。

 

そのうえで遺言の内容についてもあらかじめ考えをまとめておきます。

 

また、公正証書遺言の作成には証人2人の立ち合いも求められます。信頼できる友人や弁護士・税理士など専門家に依頼しておきましょう。

適当な人が見つからない場合は、有料ですが公証人が紹介してくれます。

 

公証人との打ち合わせ

ここまで準備できたら実際に公証役場へ行って打ち合わせをしましょう。
公正証書遺言は全国どこの公証役場でも作成することができます。

 

初回の打ち合わせ時に遺言書が作成されることはまずありません。
遺言書の内容や必要書類の確認、文面の推敲を重ねてから、日時を決めて証人2人にも来てもらい公正証書遺言を作成します。

 

公証役場へ行く際は遺言者の印鑑証明書を持参しましょう。誰が遺言するのかの確認のために使用します。

 

証人2人立ち合いのもと公正証書遺言を作成

遺言書作成当日は下記を忘れずに持参しましょう。

  • 遺言者の実印
  • 遺言者の印鑑証明書
  • 証人の認印(遺言者が手配した場合)
  • 現金

 

当日は、公証人はまず遺言者が本人であることを確認し遺言書を一字一句読み上げます。

 

遺言者は内容があっていることを確認し、終えると公証人、遺言者、証人の全員が遺言書に署名押印します。

作成し終えると後述のように法律で定められている作成手数料を支払います。

 

証人を手配してもらったときは証人にも手数料を支払います。公証人に証人を紹介してもらった場合は大体1万円前後です。

完成すると公正証書遺言の原本は公証役場で保管されます。正本と原本は遺言者に渡され、遺言者が保管します。

 

仮に正本や謄本を紛失してしまっても公正証書役場の場合は原本が公証役場にあるので安心です。

 

 

公正証書遺言の作成にかかる費用

公証人に払う費用は下記のように法律で定められています。

目的価額 手数料
100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 11000円
500万円を超え1000万円以下 17000円
1000万円を超え3000万円以下 23000円
3000万円を超え5000万円以下 29000円
5000万円を超え1億円以下 43000円
1億円を超え3億円以下 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額
引用:「公正証書遺言を作成する場合の手数料」(日本公証人連合会)

上記表のうち目的価額は相続人、受遺者ごとに受け取る財産の価額です。
相続、遺贈額が1億円までのときは11,000円が加算されます。

たとえば下記のように計算します。

相続人2人で相続財産が1人4,000万円の場合:69,000円(29,000円×2+11,000円)

これに用紙代が加わります。
遺言書の枚数によって違いますが大体合計3,000円くらいです。

 

独身者が遺言書を作成するときの書き方や注意点について解説してきました。

遺言書をのこすことでそれまでお世話になった人や友人に財産を遺贈して感謝の気持ちを示すことができます。
出身校や公益団体に寄付したいという方もおられるでしょう。

 

とはいえ、言葉は悪いですが、しろうと考えで遺言書を作成してしまうのはリスクが伴います。
遺留分の扱いについてなどは特にそうですが、作成時には法律上の問題点がないか弁護士など専門家に相談することをおすすめします。

そうすることで確実な遺言書を作成して、願いをかなえることができるのです。

 

独身者が遺言書を作るべきケースとは?(前半)

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自分は独身だし遺言書なんて作らなくてもかまわない。
このように考える方もおられます。

 

でも自分に何かあったときに、遺言書がなかったら苦労して蓄えた財産がどうなってしまうのかご存知でしょうか。

 

できれば自分の財産はお世話になった人や懇意にしていた友人、または社会のために少しでも役立ててもらえれば嬉しい、という方もおられます。

でも遺言書がないとその願いをかなえることはできないのです。

 

独身で法定相続人がいない人の財産は国庫に入る

相続人がいないとき、遺言が無い限り相続財産は国庫に入ることになるのです。

相続人がいないとは具体的にどんなケースでしょうか。

 

配偶者がいなくて子も孫もいない、もちろん親もいない。
そして兄弟もいないし甥・姪もいないというケースです。

つまり独身で第1から第3順位の法定相続人もいない場合です。
この場合、相続財産は国のものとなってしまうわけです。

 

具体的な流れとしては、亡くなったあと家庭裁判所が被相続人の利害関係人(債権者や受遺者など)や検察官の請求によって相続財産の管理人を選任します。
この管理人が相続財産の清算(借金の支払いや遺贈の実行など)とともに相続人を捜索します。

 

捜索しても相続人が期間内(6か月以上)に現れなければ相続人の不存在が確定し、相続財産は国庫に帰属することになるのです。

 

特別縁故者は財産分与の申し立てができる

とはいえ、法律上の相続人ではなくても同様に扱われてもいいような立場の方もいるかもしれません。
そのような人は特別縁故者として相続するための道も開かれています。

下記のような人は申し立てをして認められれば財産の全部または一部を受け取ることができると民法で定められています。

 

  • 被相続人と生計を同じくしていた内縁の妻や夫
  • 事実上の養子
  • 被相続人の療養、看護に努めた人

 

このような人が財産分与の請求をする場合、相続人がいないと確定してから3か月以内に家庭裁判所に申請しなければなりません。

 

独身者が遺言書を作るときに考えられるケース

長年苦労して働いて蓄えた財産がすべて国庫に渡る、となると少し複雑で虚しく感じてしまうかもしれません。

 

それだったらお世話になった人にお金をのこしたい。
少しでも感謝の気持ちや思いを伝えたいと思われる方も多いと思います。

 

また独身の方であれば、疎遠になってしまった兄弟姉妹よりも恋人や友人にお金をのこしてあげたいと思うかもしれません。

 

そこで、以下の部分で独身者が遺言を作成した方が良いと思われるケースを紹介していきます。

 

内縁の妻(夫)がいる

事実婚の関係でいくら長年一緒に暮らしていても、法律上の婚姻関係になければ内縁関係となり相続権はありません。
本人が亡くなったとき内縁の相手に財産を相続させることはできないわけです。

 

このような場合は遺言書で財産を遺贈してはじめて内縁の相手に財産をのこすことができます。

遺言書には相手の住所、氏名、生年月日と遺贈する財産を特定して明記しましょう。

 

遺言者が独身で配偶者、子どもがいなくても父母がいる場合は、法定相続人が父母になるので遺留分への配慮も必要です。
配偶者、子ども、父母がおらず兄弟姉妹だけの場合は、遺留分がないため全額を内縁の妻(夫)に遺贈しても遺留分を心配する必要はありません。

 

なお、内縁の相手との間で子どもがあり認知している場合は、その子が法定相続人となります。

 

お世話になった人や友人に遺贈したい

生涯独身だったり身寄りが無かったとしても、人生を歩んで行くうえでお世話になった方や恩人といえる人がいるはずです。
また親身になって介護や身の回りの世話をしてくれた人もいるかもしれません。

そうした人に財産を遺贈することで感謝の気持ちを表したいという場合もあるでしょう。

 

実際のところ、当人たちが「私がお世話をしたのだから遺産をわけて欲しい」などとはなかなか言い出せないものです。
示してくれた親切や貢献度に見合うだけの財産を遺言で遺贈するのが思いやりかもしれません。

 

遺言には受遺者が特定できるように住所、氏名、生年月日などを明記し財産を譲る理由も記しておくとよいでしょう。

 

また万が一、受遺者が遺贈を辞退した場合の処理の仕方についても記しておいたほうがよいかもしれません。

財産は相手が受け取りやすいように換金処分して遺贈するのも一つの方法です。

 

ペットの世話を依頼したい

ペットがひとり暮らしのパートナーという方も増えています。
この場合も自分に何かあったあとペットがどうなるのか気になると思います。

もし世話をする人がいなければ最悪の場合は処分されることになりかねません。
そのような事態を避けペットを守るためにも遺言書を作成しておいた方がよいでしょう。

 

とはいえペットに相続権はないので、ペットに財産を相続させることはできません。
そこで「負担付遺贈」というものを活用します。

ポイントが3つあります。

 

1.ペットの世話を条件に財産を遺贈する
ペットの世話を依頼する遺言を書いたとしても、法的拘束力はありません。
けれどペットを引き受けることを条件に財産を遺贈することはできます。
遺言の内容を、ペットの世話を引き受けることを条件に財産を譲渡する、というような文面にします。

 

2.生前に了解を得ておく
相手の都合を考えずに遺言すると引き受けてもらえない可能性があります。
もし適当な人がいなければペットの世話をしてくれる会社と契約を結ぶという方法もあります。

 

3.遺言執行者を指定しておく
遺言執行者は受遺者がペットの世話をしないなど義務を怠ったときに、しっかりと世話するよう催促します。
それでもいうことを聞かないときは家庭裁判所に遺言の取り消しを請求できます。

 

遺言書の種類

ここまでは独身者が遺言作成を考えた方がよい様々なケースについて取り上げてきました。

ただ、遺言書はどのように書いてもよいわけではありません。定められた方式に従って書かないと法的に無効になってしまいます。

民法で定められた普通方式は3種類あります。
どの方式を選ぶのかは自由ですが、それぞれメリット・デメリットがあるのでよく考えて選ぶ必要があります。

 

自筆証書遺言の特徴

自筆証書遺言は遺言者が全文を自筆で書いて署名・押印して作成します。保管も自分でします。
紙とペンがあればいつどこでも作成できます。

 

自筆証書遺言のメリット

  • もっとも手軽に作成できる
  • 費用がかからない
  • 内容について秘密を保てる

 

自筆証書遺言のデメリット

  • 要式不備で無効になる恐れがある
  • 偽造、紛失、改ざんのリスクがある
  • 死後発見されないこともある
  • 死後は家庭裁判所での検認の手続きが必要

 

公正証書遺言の特徴

遺言者が口述した遺言の内容を公証人が筆記し作成したものが公正証書遺言です。
原本は公証役場で保管され、正本と謄本が遺言者に渡されます。

 

公正証書遺言のメリット

  • 公証人が作成するので要式不備で無効になる心配がない
  • 公証役場で保管されるため偽造、紛失のリスクがない
  • 死後の家庭裁判所での検認手続きが不要

公正証書遺言のデメリット

  • 公証人や証人に依頼するための費用がかかる
  • 遺言内容が公証人と証人に知られてしまう

 

秘密証書遺言の特徴

秘密証書遺言は自筆証書遺言と公正証書遺言の中間的な方法になります。
手間の割にメリットがすくないので実際に利用されることはほとんどありません。
遺言の内容に関しては秘密が保たれ、作成した事実のみが公証役場に記録されます。

 

秘密証書遺言のメリット

  • 遺言書の本文は代筆やパソコンで作成したものでも有効(署名は自筆)
  • 内容に関しては秘密を保てる

 

秘密証書遺言のデメリット

  • 要式不備で無効になる恐れがある
  • 公証人や証人に依頼する費用がかかる
  • 死後は家庭裁判所での検認の手続きが必要
  • 偽造、紛失、改ざんのリスクがある

 

今回は独身者が遺言書を作るべきケースについて解説しました。
まだまだ解説しきれていませんので、次回も続きの内容で記事を更新したいと思います。

法定相続分や遺産を受け取れないケースとは

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前回は相続人と被相続人との関係についてみていきました。

今回は法定相続分や遺産を受け取れないケースについて触れていきたいと思います。

 

財産相続ができないケースとは

相続が発生した場合に、必ずしも遺産を受け取れるとは限りません。
ここでは、相続ができない場合をみていきます。

 

相続権がない

そもそも、相続権がない人たちも存在します。
先にも書いた人もいますが、以下のような人には相続権がありません。
従って、当然ながら相続権を主張して争う権利すらありません。

 

  • 内縁の夫や妻
  • 離婚した元夫や妻
  • 再婚した配偶者の連れ子
  • 遺言者の偽造を行なったもの

 

 

相続欠格

相続欠格とは、元々相続権はあったものの、ある行為により相続権を失ったもののことです。

 

家庭裁判所への手続きなど、欠格となるための手続きを踏まなくても、欠格に該当する行為を行なったことによって直ちに相続をする資格を失うという大変厳しいものです。

なお、この相続欠格は、ある行為によって資格喪失となるものですので、それに該当する本人のみに効力が発生します。

 

従って、代襲相続はできるということになります。

 

相続廃除

相続廃除とは、法に定められた一定の事由がある場合、被相続人の意思によって、相続人とされる人である推定相続人から相続の資格を剥奪するというものです。

 

その一定の事由とは以下です。

  • 被相続人に対する虐待
  • 被相続人に対する重大な侮辱
  • その他の著しい非行

 

相続廃除をするためには、被相続人が家庭裁判所に相続廃除の申立てを行う必要が発生します。

この点、直ちに資格が失われる相続欠格とは異なりますので、注意が必要です。
被相続人の生前の場合には、自分自身で家庭裁判所に廃除の申立てをすることが可能です。

一方、遺言により被相続人の相続廃除に対する意思が伝えられた場合には、被相続人自身で申立てをすることは不可能であるため、遺言執行者が家庭裁判所への申立てを行うことになります。

 

相続放棄

相続放棄とは、被相続人の遺した相続財産を相続人が全く受け取らないことを決め、自ら放棄することをいいます。

 

相続放棄をすると、放棄をした相続人は初めから相続権がなかったものとして扱われることになります。

 

相続放棄をする場合とは、例外的な場面であると思っておいてください。
例えば、被相続人に多額の借金があるために資産よりも負債が多くなり、相続によって借金を背負うことになってしまうような場合や、相続資産がかなり少額であり、相続人に経済的余裕もあり、相続が不要と判断するような場合などです。

 

このような特別な事情がなければ、相続放棄について検討、懸念する必要はありません。

財産を相続する前にやっておくべきこと

相続が発生したら、悲しみにひたる暇もなく、様々な事務手続きが待っています。
ここでは、相続をする前にどのようなことが必要となるのかを解説します。

(1)相続財産の洗い出し

遺産を分割するためには、相続財産として何があるのかを明らかにしなければなりません。
被相続人名義の不動産、銀行口座、株式、車など、見当のつくもの全てをリストアップし、不動産であれば登記簿謄本、車であれば車検証などによって名義をしっかり確認しましょう。

 

(2)相続人の決定

被相続人の死亡時から出生までさかのぼり、家族関係を確認するために戸籍謄本を取得します。

 

被相続人の本籍地の役所で取得の必要がありますので、この点に注意が必要です。
郵送でも取得が可能ですので、遠方の場合は郵送での取得を検討されても良いでしょう。

 

(3)遺産分割協議

遺言があれば、そこに遺された被相続人の意思を実現する必要がありますので、遺産分割協議の必要はありません。

 

一方、遺言がない場合は、(1)と(2)のステップで明らかになった全相続財産を全相続人で分割するための協議を行います。

 

簡単にいうと、遺産をどのように分けるかを話し合うということです。
話し合いの結果は、遺産分割協議書にすることで、相続財産の名義変更の手続きがスムーズにいきます。

 

特別に決まった書式はありませんので、ご自身で作成することもできますが、どうしても手間と時間はかかりますので、この部分を専門家に頼むことも検討しても良いでしょう。

相続について、具体的なイメージは持っていただけましたか?
相続は、親子関係や兄弟姉妹などとの関係性に向き合ういい機会にもなるかもしれません。

 

なかなか話しづらい内容ではあるかもしれませんが、トラブルなく相続ができるようにするためには、関係者間での話し合いは欠かせません。

 

もし、当事者同士で解決できそうにない場合には、専門家に相談することも視野にいれておきましょう。
早めの対策が大切です。

 

相続人と被相続人との関係は?

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財産を持つ人が亡くなった場合相続が発生しますが、いざ相続となった場合のために準備をされている方はまだまだ世の中には少ないことでしょう。


さらには、ご自身がある程度歳をとるまで相続について考える機会がなく、いざとなって初めて相続について意識される方というのも多くいらっしゃるかと思います。

 

相続とは、財産を引き継ぐ家族や親族の問題と考える方もいるかもしれませんが、引き継がせる可能性のある方は、その相続をスムーズにする手助けをしておくこともできるのです。


今回と次回の記事では、基本的な解説も交え、相続人、被相続人どちらの方々にもご理解いただけるような形でご説明をしていきます。

 

相続人と被相続人の関係は?

相続が発生すると、これまでの家族や親族関係の中に、ある一定範囲の家族・親族関係の人は、相続人と被相続人という関係が生じます。


被相続人とは、自分の財産を遺し、死亡した人のことをいいます。
相続人とは、被相続人の遺した財産を受け継ぐ権利を持つ人のことをいいます。

 

原則として、被相続人の遺した財産は、全て相続人に引き継がれることとなります。
相続人が複数存在する場合には、被相続人との関係によって相続をする財産の割合が法律(民法)で規定されていますので、そのルールに従って配分をすることになります。
ただし、これは原則の話です。

 

ここから、より細かい相続人と被相続人との関係について解説をしていきます。

 

財産を相続できる法定相続人とは?

先に説明をしたように、財産を相続できる人は法上で規定されている被相続人との家族・親族関係によって決められており、財産を受け取ることができるとされている相続人を法定相続人といいます。

 

法定相続人の中の相続順序

法定相続人の中でも相続の順位が決まっており、すべての人に等しく遺産が分割されるわけではありません。

 

配偶者

被相続人の配偶者である夫や妻は、存命であれば常に相続人となります。
相続の順番は一般的に第一順位、第二順位などの順位で表されるのですが、配偶者には順位が付されておりません。

このことからもわかるように、配偶者は当然に相続人となります。

 

ここで注意すべきは、内縁の夫や妻である場合、つまり、婚姻関係にある法律上の夫や妻のみが常に相続人とされる人に当たるということです。

 

近年、内縁の夫や妻にも様々な権利が認められてきてはいますが、相続に関しては未だ権利が付与されているに至っていません。

 

直系卑属

直系卑属とは、子やその子(孫)のことをいいます。
直系卑属は、法定相続順位第一順位となります。

 

孫が法定相続人となれるのは、子がすでに死亡している場合となります。これを代襲相続といいます。ここでの補足としては、養子には法定相続権がありますので、実子と同様の割合で遺産を受け継ぐ権利があります。

 

配偶者の場合には、内縁の夫や妻に相続権はありませんでしたが、子の場合は、婚姻関係にない間の子であっても、認知をされていれば相続人となります。

 

また、胎児であっても相続人となり得ます。
民法上で、相続においては、胎児はすでに生まれたものとみなされます。
正確にいうと、出生(生まれること)によって、相続権が確定することになります。

 

その理由は、万が一胎児が死産となった場合、すでに生まれたものとして権利を確定させてしまっては、後戻りをしなければならないということになるからです。
一度確定させた相続を再度やり直すというのは、煩雑であることのみならず、取り返しのつかないことにもなりかねません。

 

一方、胎児がいることは明らかであるのにもかかわらず、それを無視して相続を行ったとしても、再度相続をやり直すということになってしまいます。
従って、実務上では、胎児が存在することは明らかであるために、胎児の出生を待って遺産分割を行うのが一般的です。

 

直系尊属

直系尊属とは、父母、祖父母などのことをいいます。
直系尊属は、法定相続順位第二順位となります。したがって、直系卑属がいない場合に相続権が発生します。

 

兄弟姉妹

被相続人の兄弟姉妹は法定相続順位第三順位となり、直系尊属がいない場合に相続権が発生します。
兄弟姉妹がなくなっている場合には、その子である甥や姪が代襲相続することになります。

 

法定相続分とは

ここまでは、法定相続の順位をみてきましたが、法定相続には、それぞれがどの程度の財産を相続するのか民法上に規定があります。

誤解を恐れずにいいますと、相続割合は、原則としては遺産分割協議において、相続人全員の話し合いで決めることができます。

 

特に相続人全員の間で争いがなければ、民法上の規定である法定相続分に従うことが一般的です。

 

配偶者が生存している場合の法定相続分は次の通りです。

+直系卑属(子や孫)   :配偶者1/2、子1/2

+直系尊属(父母や祖父母):配偶者2/3、父母1/3

+兄弟姉妹        :配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

 

 

配偶者が存在していない場合は、順位によってその中で頭割りをすることになります。

 

今回は、相続人と被相続人の関係についてみていきました。

次回は、法定相続分や遺産を受け取れないケースなどについて引き続き詳しく解説していきたいと思います。

 

相続税の計算方法や計算例

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前回の記事では相続税の現状をご紹介しました。
この記事では相続税の計算方法や計算例と共にご紹介します。

 

 

相続税の計算方法

財産を相続予定の人やすでに相続した人は自分にどのくらいの相続税がかかるのか不安ではないでしょうか。
相続税自体が課税されるかどうかも不安に感じるはずです。
相続税の税額の把握や相続税の課税の有無について判断する助けとして、相続税の基本的な計算方法をご紹介します。

 

相続税の計算は7つのステップで行います。

 

 

まずは遺産と相続人を調査する

相続税の計算をするときはまず遺産と相続人の調査をしなければいけません。
法定相続人の数は基礎控除など相続税の計算に関係します。
また、遺産について明確にしておかなければ相続税の計算ができません。相続税とは遺産への課税だからです。

 

 

相続税の計算をする前提として、まずは相続人と遺産について調査しておきましょう。
相続人や遺産の調査が難しい場合は弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
また、相続税の詳細な計算には専門知識を要するため、計算が難しいと感じた場合や詳細な相続税額を知りたい場合も税理士などの専門家に相談してみるといいでしょう。

 

 

相続税の基礎控除を計算する

遺産が相続税の基礎控除の範囲内であれば相続税の課税はありません。
遺産や相続人の調査が終わったら相続税の基礎控除を計算します。
相続税の基礎控除の算出にはすでに説明した相続税法改正後の計算式を使います。

 

3,000万円+600万円×法定相続人の数

 

法定相続人の数のところには相続税計算の最初のステップで調査した法定相続人の数を当てはめてください。

 

 

遺産の財産ごとに相続税評価

遺産の中にはすぐに相続税に使う評価額がわかる財産と容易には分からない財産があります。
現金や預金は金額(評価額)がひと目で分かりますが、不動産などは見ただけでは評価額が分かりません。
美術品や宝飾品なども即座に相続税の計算に使う評価額が分かるわけではありません。
そのため遺産の財産の種類ごとに相続税の評価額を算出する必要があります。

 

 

遺産の計算や仕訳を行う

不動産や預金などプラスの遺産を計算します。

たとえば預金が5,000万円で不動産の評価額が2億円の場合は遺産総額2億5,000万円です。
相続には負債も関係しますので負債についても計算が必要になります。
負債がプラスの遺産を上回っている場合には相続放棄や限定承認などの裁判所手続きを早めに検討することが重要です。

 

 

注意したいのは遺産に含まれるのか判断が難しい物です。
被相続人の家に神棚や位牌があったらどうでしょう。
神棚や位牌については相続税評価を行い遺産総額に含めなければならないのかと思うかもしれません。

 

 

相続税には非課税財産が定められています。
位牌や仏壇、神棚などは代表的な非課税財産です。
この他に国や地方公共団体、特定の公益法人などに寄付した財産も非課税財産として扱われます。

遺産総額を計算したら次は遺産から相続税の基礎控除を引きます。

 

 

相続税の総額を計算する

法定相続人たちが仮に法定相続通りに相続したものとして各相続人の相続税額を計算します。
各相続人の相続税額が出たらすべて足して相続税の総額を求めます。

 

 

相続税の税率は遺産額により変動する仕組みです。
相続税額が1,000万円の場合は相続税率10%、1,000万円を超えて3,000万円までになると相続税率は15%になります。
遺産が6億円を超えると相続税率は最大税率である55%が適用されますので、相続税の税率は10%~55%の間で変動するかたちです。

 

 

注意したいのは遺産の額に応じた控除額が定められている点になります。

 

 

遺産1,000万円以下については控除なしになりますが、1,000万円を超えて3,000万円までになると50万円の控除が定められているのです。
控除は相続税率に伴い変動し最高で6億円超の7,200万円まで上がります。
相続税の計算をするときは控除額を忘れないよう注意してください。

 

 

各相続人の相続税額を計算する

相続人すべての相続税額をプラスしたものを改めて各相続人に配分して相続人個人の相続税額を算出します。

なぜこのような流れで各相続人の相続税額を計算するかというと、法定相続通りに相続人たちが遺産を相続するとは限らないからです。

 

 

遺産分割協議によって遺産分割を自由に決めることもあるため、法定相続による相続が行われたものと仮定して各相続人の相続税額を計算してその相続税額を足し、あらためて遺産分割に合わせて相続人に相続税を分配する流れで計算します。
以上が相続税の基本的な計算方法です。

 

 

相続税の計算例

相続税の基本的な計算方法を説明したところで相続税の試算例についても解説します。
相続税を計算するときの参考にしてみてください。

 

 

父親が亡くなり相続人は母親(配偶者)と子供が3人という相続人計4人のパターンです。
遺産は次の通りになります。

 

  • 預金と不動産の合計 8,000万円
  • 死亡保険金 2,300万円
  • 負債 1,000万円
  • 葬儀費用 400万円

 

この相続パターンでは被相続人の生前に贈与などはありませんでした。
使える特例を探した結果、相続税の配偶者控除が利用できることが判明しています。
以上の条件で相続税を試算します。

 

 

まずは遺産や負債を計算する

相続税額を計算するためにも遺産や負債の計算をしなければいけません。
遺産の中に生命保険金がありますので、生命保険金の非課税枠を使って計算を行います。
生命保険金は「500万円×法定相続人の人数」が非課税枠です。
生命保険金は2,000万円が非課税枠になりますので、相続税の計算に含めるのは300万円分になります。不動産や現金と合わせて8,300万円です。

 

 

遺産のプラスである8,300万円から負債や葬儀費用を引きます。
負債と葬儀費用の合計金額である1,400万円を引くと残りは6,900万円です。
さらに6,900万円から相続人4人の基礎控除である5,400万円を引くと相続税の対象になる残りは1,500万円という計算結果になります。

 

 

相続人の相続税額を計算する

相続税の対象になる財産を算出したところで相続人全員に法定相続分を配分します。
配偶者が750万円で子供が250万円ずつになり、それぞれの遺産に応じた相続税を計算するという流れです。

 

 

相続税額は配偶者が75万円で子供たちが25万円ずつになります。
相続税総額は150万円です。
この相続税額を相続人の遺産分割協議などに合わせて配分することになります。

 

 

ただし相続税には控除や特例というものがあり、控除や特例を使える場合は相続税負担を軽減可能です。
配偶者と子供3人の相続ケースでは配偶者控除が使える可能性があるため、他の控除や特例と合わせて条件を確認しておく必要があります。
仮にこの相続ケースで配偶者控除を使う場合は配偶者分の相続税が0円になり、相続税総額は75万円に変化するのです。

 

 

相続税の計算方法について解説しました。

相続税の計算は流れだけ見ると単純です。
しかし遺産に合わせた相続税評価などは相続税のルールや法律の深い知識を持っていないと算出が難しいなど、流れだけ追えば相続税を計算できるというわけではありません。

 

自分で相続税の計算をしてもあくまで試算でしかなく、実際の相続税額とはズレが生じてしまう点も注意が必要になります。

相続税がかかったケースの平均額は約1,800万円!

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遺産に対する課税が相続税です。
相続があると必ず相続税が課税されるわけではなく、遺産が基礎控除以下だと相続税の支払いは原則的に必要ありません。

 

 

遺産は相続人の今後の生活の基礎になる財産だからこそ、課税により相続人の生活が困らないよう相続税の仕組みを工夫しているのです。

 

 

日本で相続税が課税されるのはどのくらいの割合なのでしょうか。
また、支払われる相続税の平均額はどうなっているのでしょう。
この記事では相続税の現状をご紹介します。

 

 

相続税が課税される人の割合は平均9%

国税庁「令和元年分 相続税の申告事績の概要」によると相続の際に相続税を支払う割合は相続100件中平均9件となっています。
相続税はすべての相続ケースで支払いを要するわけではなく、実際に相続税の支払いが必要になるのは100の相続が起きるとそのうちの9件しかないということです。

 

 

逆に考えると100件相続が起きてもそのうちの91件については相続税の課税が発生しないことになります。

平成30年と令和元年の相続税の課税状況を表で見てみましょう。

 

  平成30年 令和元年
被相続人数 1,362,470 1,381,093
相続税の申告をした被相続人数 116,341 115,267
課税割合 8.5 8.3

 

平成30年と令和元年の課税割合を見ると平均9%で推移しているのが分かります。
相続税の課税割合は平成27年に平均4%から平均8~9%台へと急増しています。
以降の相続税の課税割合は令和元年まで同様に平均8~9%で推移している状況です。

 

 

平成27年の相続税法改正により課税割合が急増

なぜ平成27年に相続税を課税されるケースが急増したのでしょうか。
急増の理由は相続税ルールの改正です。

 

 

平成27年に相続税のルールの「基礎控除」が改正されました。

相続税の基礎控除とは「この金額の範囲内であれば相続税が発生しない」という枠のことです。
平成27年の相続税法改正により従来の基礎控除が大幅に縮小された結果、相続税が課税されるケースが爆発的に増えてしまったのです。

 


参考として平成27年までの相続税基礎控除と相続税法改正後の基礎控除を比較してみましょう。

 

●平成26年までの相続税基礎控除
5,000万円+1,000万円×法定相続人の数

 

●平成27年相続税法改正後の基礎控除
3,000万円+600万円×法定相続人の数

 

 

このように基礎控除の計算式自体が相続税法改正前と後ではかなり違っています。

それぞれの計算式を使って基礎控除を試算してみます。
法定相続人の人数を2人で試算すると相続税法改正前の計算式では基礎控除が7,000万円ですが、相続税法改正後の計算式では基礎控除が4,200万円という計算結果です。
前者では遺産7,000万円まで相続税の課税はありません。

 


対して後者では4,200万円を超えると相続税の課税対象になってしまうのです。
相続税法改正によって相続税基礎控除の枠が大幅に縮小されたため、結果的に基礎控除の枠からはみ出してしまう相続ケースも増えました。
平成27年から相続税を課税される平均課税割合が一気に2倍近くまで増えている背景には、相続税法改正という事情があるのです。

 

 

支払った相続税の平均額は約1,800万

相続税の支払いが必要になるケースでは平均どのくらいの課税が発生しているのでしょう。
相続税の平均課税額についても見てみましょう。

  

  平成30年 令和元年
課税価格  162,360億円  157,843億円
相続税額  21,087億円  19,754億円

被相続人1人あたりの課税価格

 13,956万円  13,694万円
被相続人1人あたりの相続税額  1,813万円  1,714万円


 国税庁「令和元年分 相続税の申告事績の概要」によると相続税の支払いが必要になるケースでの平均税額は平均1,800万円となっています。
平成30年と令和元年では1,700万円~1,800万円で推移していますから、相続税の平均額は1,800万円ほどということになるはずです。

 

 

相続税額の平均は平成27年から平成29年についてもあまり変化がありません。
平成30年と令和元年と同じように相続税額の平均が1,700万円~1,800万円で推移しています。

 

 

近年の相続税について総括すると「課税されるケースの割合が増え、相続税額は平成27年以降1,700~1,800万円が税額の平均になっている」ということです。

 

 


今回は相続税の平均について紹介しました。

次回は相続税の計算方法や計算例について解説します。

相続税の計算をするときは専門家に相談し正確な相続税額の把握に努めてはいかがでしょう。
そのうえで相続税対策や申告を進めてはいかがでしょうか。

皆さんの参考になれば幸いです。

相続財産の登記、ほんとに必要なの?

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相続財産の中に不動産が含まれていたら、、、

遺産分割が済んだら登記をしなくちゃなーと思いますよね。

 

 

 

しかし日本全国に所有者が不明の土地がものすごい数に上るのをご存じでしょうか。

法務省が2017年6月に発表したサンプル調査においては、「最後の登記から40年以上経過する土地は大都市で6.6%(宅地に限ると5.4%)、中小都市などで26.6%(田畑で23.4%)あります。」(2017年12月31日付日本経済新聞朝刊『所有者不明の土地、なぜ増加?相続時に登記義務なし』より引用)

 

 

 

相続財産を登記しないで放置しているため所有者が不明の土地が増えているということなのだそうです。

 

 

 

 

せっかく相続したのに登記しないのはなぜなのか、

登記しないとどのようなことが起こるのか、今回は簡単にまとめて説明したいと思います!

 

 

まずは、なぜ相続登記されない土地が上記のように広大になっているのかについては、

下記の2つが大きな原因になっていると私は思っています。

 

 

 

①相続登記には期限がなく、法的な義務がないこと

とすると、不動産登記は相続した土地の価値があまりないのに、費用だけがやたらかかるとなったら、あなたは登記しますか・・・?

上記の日経新聞の引用を見ると、大都市よりも中小都市の方が所有者不明の土地が多いことがわかりますよね。

登記には登録免許税(固定資産評価額の1000分の4)がかかりますし、お金をかけてまで登記したくないと考えるのでしょう。

 

②手続きが面倒くさい

不動産の相続の登記の申請自体は、本人でもできますが、集める書類も多く面倒なのが厄介です。司法書士に依頼すればいいのですが、そうすると報酬も支払わなくてはなりません。

そうすると、あまり価値のない土地などをわざわざ登記したくないと考えるのもわからなくもありません。

 

 

 

では、相続登記をしておかないことで、受けるデメリットはなんなのでしょうか。

 

 

 

①相続人が相続した不動産の登記をしないまま、さらに亡くなるとまた相続が発生し、妻や子に、孫にというようにどんどん相続人が増えていきます。そうすると、だれが相続人であるかの確認も手間になりますし、協議を行うにしてもなかなか同意が得られないなんてこともあるかもしれません。

 

そうすると弁護士やら、司法書士やら結局専門家の助けが必要になるわけで、相続登記を後送りすることで結局費用がかさみます。

 

②不動産を速やかに売却したり、抵当権をつけたりできない。

相続の協議が済んで、不動産を相続人の一人が相続することになっていたとしても、相続登記がされていなければ、他人から見れば、相続人全員で共有していることになります。

 

良い買い手が見つかったので急いで売却したい、と思っても相続登記を行ってからではないと売却できません。場合によってはチャンスを逃すこともあるかもしれません。

 

③他の相続人が勝手に自分の法定相続分で登記して、持ち分を他人に売却してしまった。

またはほかの相続人の債権者が勝手に法定相続分の登記をしてしまった、など。

登記をもたもたしている間に、他の相続人の意図や状況等で、他人と不動産を共有してしまうことになります。こういうことは実際にあって、買取を迫られることもあるそうです。

 

 

 

以上、なぜ、相続登記がされないのか、と、相続登記をしないことのデメリットを簡単に説明しましたが、皆様はどのようにお考えになったでしょうか。

 

 

 

 

 

そもそも価値があまり感じられずに、登記もしないでいるような土地・家屋は相続放棄すべきなのではないかな、と私見ですが思いますし、特に建物が残っていたりする場合はそれが壊れたりなどして、なんらか他人にけがなどさせたりする場合は責任の所在が分からなくなりますし、よくない事ではありますよね。

 

 

 

国は相続登記の義務化を進めています。

時限措置として、2018年4月1日から2021年3月31日までは一代前の相続登記にかかる登録免許税を免税にする特例があるそうです。

 

 

 

以上が私が調査した結果ですがご参考としていただき、相続登記は重要なことなので、必ず専門家(弁護士・司法書士)に相談して最新の法令を確認し、適切な対応をとれるようにしていただければ幸いです。

 

 

相続人がいないと相続財産はどうなる?

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2015年の国勢調査では、男性の生涯未婚率は24.2%、女性は14.9%となっています。

結婚をされていないとは配偶者や子供がいませんので、相続人は自分の親と兄弟になることはいつかご説明してきたかと思いますが、

 

もし自分の親はすでに亡くなってしまっていて、兄弟もいない一人っ子だったら、、、

相続人が全くいない方の相続はどのようになるのでしょうか。

もしその時に不動産があったら、それは誰の持ち物でもなくなってしまうのでしょうか。

 

 

 

今回は相続人がいない場合の相続について、書いていきたいと思います。

 

 

 

 

 

相続人がいないということは、一人っ子の場合だけでなく、相続人全員が死亡してしまっている場合や相続人全員が相続欠格であったりする場合もあります。

また、プラスの財産よりもマイナスの財産が多いために相続人全員が相続放棄を選択した場合も相続人がゼロということになります。

 

 

 

そのような時は、相続人ではないけれども、特別縁故者(不動産の共有者、内縁者、被相続人と生計を共にしていた人)や、債権者から「相続財産管理人の選任申立て」が家庭裁判所になされることがあります。

 

これは、相続財産を管理する者のことで、通常は弁護士などが家庭裁判所に選任されます。

相続財産管理人は、被相続人の債権者には支払いを行って、財産の精算を行います。最後に残った財産は最終的に国庫のものになります。つまり、行先のない相続財産は、最終的に、国のものになってしまうのです!

 

 

 

 

相続財産の管理人は、下記の流れで相続人や、相続債権者を探します。

 

 

①第1の公告・・・家庭裁判所が相続財産管理人を選任する旨の公告を、官報で2か月間掲示して、相続人に申し出るようにお知らせします。

この間、相続財産管理人は、相続財産の整理や、清算、弁済などの手続きを行っています。

②第2の公告・・・上記の第1の公告を経ても相続人が見つからなければ、相続財産管理人は、2か月以上の期限を定めて、債権者や受遺者(被相続人から財産を受け取る予定があった人)に請求を申し出るよう公告をします。この広告は2回目の相続人捜索の公告の意味もあります。

③第3の公告・・・相続人捜索の公告。相続財産管理人は、6か月以上の期限を定めて、相続人に自身の権利を主張するように求める公告をします。これは相続人の不存在を確定させる公告でもあります。

 

この公告期間が経過すると、相続は終了し、名乗り出なかった相続人や債権者、受遺者も今後請求する権利をなくします。

 

 

 

 

そうして、相続人の不存在が確定すると、特別縁故者(不動産の共有者、内縁者、被相続人と生計を共にしていた人)が、「財産分与請求の申立て」を家庭裁判所に申し立てることができるようになります。申立てには期限があって、相続人不存在の公告が終了してから3か月以内です。

 

 

 

家庭裁判所は、特別縁故者がどのような人なのか、分与を求める財産の内容、縁故の度合い、生活の状況などを考慮して、分与の審判もしくは申し立て却下の審判をします。

 

※ここで、私の仕事ともかかわってくるのですが、不動産の共有者は特別縁故者にあたる者がいない場合や、上記の財産分与請求の申立てが却下されたとき、共有する不動産の相続財産分を受け取ることができます!

 

 

 

 

分与の審判がされれば、相続財産管理人は、特別縁故者に財産を引き渡しますし、特別縁故者からの申立てもなく、期限の3か月が経過したときは、家庭裁判所に終了の報告書を提出して、最終的に相続財産は国のものになります。

 

 

 

 

ここまで約1年かかります!とても長いです。

それに相続財産管理人を選任するのに費用も掛かります。

特別縁故者も、財産分与請求の申立てを行わないと財産分与してもらえません。

 

 

 

 

自分の相続財産が最終的に国のものになってしまうのなら、だれかに財産を残すよう遺言書を作成することなども検討したいところです。

 

慈善団体等に寄付をする場合も遺言でできるそうです。

 

 

不動産の共有者、特別縁故者の方は上記をご参考にしていただき、ぜひ弁護士などの専門家にもご相談くださいね!