不動産売却のご相談にいらっしゃるお客様の中には、相続した物件を手放したいとのケースがちょこちょこあります。
その場合によく質問されるのが、相続税のことです。
私のように相続する財産がない家庭は気楽なものですが、残す財産がある家庭では、相続は大きな問題です。
実家の不動産や、被相続人(亡くなった方のこと)にまとまった額の預貯金がある場合は、その資産に価値に応じて相続税が課されます。
詳しい額は税理士さんに相談するのが一番ですが、ここでは大まかな流れをご説明したいと思います。
【その1:相続する財産の総額を把握する】
相続する財産は、ご家庭によってさまざまです。
現金や預貯金、株式など金額が明確なものもあれば、実家の土地建物や収益物件など、すぐには金額の分からないものもあります。
ですが、これらの把握をしなければ、何も始まりません。億劫かもしれませんが、まずは確認しましょう。
不動産の価格は役所で取得できる「固定資産評価証」で確認できる場合もありますが、こちらは実際の相場とかけ離れていることも多いです。
地域によっては税額として適用できないケースもありますので、詳しく知りたい場合は、やはり税理士さんへの相談がおすすめです。
【その2:相続人の特定をする】
相続が発生したとき、財産の把握と同じくらい大事なのが相続人の特定です。
「残された家族が相続人」と思い込んでいる方も多いと思いますが、亡くなった方には「家族の知らない家族」がいるケースもあります。
少々怖い言い方ですが、相続トラブルの原因になりやすいので、ちょっとお話します。
例えばお父さんが亡くなった場合、残されたお母さんと子供が相続人になります。
ところが、実はお父さんには家族に内緒にしていた離婚歴があり、前妻との間にも子供がいる。というケースがあるのです。
「ウチのお父さんに限ってそんなことはない」と思う方が殆どだと思いますが、お父さんに限らず、被相続人の戸籍はちゃんとチェックしましょう。
ちなみに、相続財産に不動産がある場合、相続登記の必要書類として戸籍謄本の提出が求められます。
誰かが亡くなったら戸籍謄本を取得する。基本的なことなので覚えておいてください。
【その4:課税対象額を計算する】
課税対象とは、文字通り税金を課す対象となる財産額のことです。
その1でご説明した内容と「イコール」ではありませんのでご注意ください。
まず、相続税には「基礎控除額」があります。「ある一定の金額までは課税しませんよ」という意味なので、それを知らないと税額の計算が大きくズレてしまいます。
順番としては、まず基礎控除額を計算し、課税対象額を算出します。
(基礎控除額の計算方法)
3000万円+相続人の数×600万円=基礎控除額
例えば相続人が4人の場合、3000万円+4×600万円=5400万円となります。
(課税対象額の計算方法)
相続財産の合計金額-基礎控除額=課税対象額
例えは相続財産の総額が7000万円の場合で前述の基礎控除額を当てはめると、7000万円-5400万円=1600万円
となります。
このケースでの課税対象額は「1600万円」です。
【その5:相続税額を計算する】
課税対象額が分かったら、それに税率を掛けて実際の相続額が分かります。
ここで注意して欲しいのが、税率を掛けるだけではなく、さらに控除される額があることです。
この控除額は課税対象額に応じて変わるもので、その4でご説明した「基礎控除額」とは別物です。混同しがちなので気を付けてください。
(相続税額の計算方)
では、その4のケースでの相続税額を計算してみましょう。
課税対象額1600万円×税率15%-控除額50万円=190万円となります。
なにも控除せずに税率だけ掛けてしまうと、相続額7000万円×税率30%=2100万円になってしまいます。その差1910万円です。
「えらいこっちゃ」です!
こうならないためにも、相続資産のあるご家庭は税理士さんに頼るのが無難です。
具体的な税率と控除額に関しては、一覧表をご確認ください。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
【相続税はいつ納めるか?相続税に納期はあるのか?】
では、相続はいつ納めればいいのでしょうか?
相続税には納期があります。「相続の開始から10ヵ月以内」に、申告と納付をしなければいけません。
つまり、被相続人が亡くなってから10ヵ月の間に前述した行程を行わなければなりません。
相続財産に不動産が含まれているなど資産価値が分かりにくいものは、専門家への早めの相談が肝になるわけです。
万が一、申告や納税を怠ると、延滞税が加算されてしまいます。
更に、上記の説明で出てきた各種の税額控除も受けられなくなるため、相続人の負担は益々大きくなるのです。
相続税は、必ず期限内に納付しましょう!
【まとめ】
一口に「相続税」と言っても、その計算方法や、適応される税額、控除額はさまざまです。
このブログでご紹介したのはほんのさわりの部分で、実際に計算する時には課税額に該当するもの、しないものなどの判断が難しかったりします。
何度も言いますが「ウチの相続では多少の資産がある」そう思う方は、自己判断せず、税理士さんへのご相談が無難です。
市町村によっては、役所で「税理士相談会」を開いていることがありますので、広報誌などをチェックしてみるのもおすすめです。