相続した農地を売却する。通常の売買との違いはあるの!?

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こんにちは!estate_diaryです。

今日は現在進行中の売買案件を基に、相続した農地を売買するまでの流れを解説致します。

土地売買において農地は特別に保護された存在ですが、相続の場合は通常の売買での取得と状況が異なるため、必要な手続きも違います。

通常の売買と相続の違いを確認しながら、理解してもらえると嬉しいです!

 

農地を売買で取得する(通常の流れ)

農地の所有権を移転する場合、通常は以下の2つのパターンが考えられます。

  【その1:売買した農地を農地として利用する】

農地とは、そもそも農業のために使う土地です。そのため農業を営む人(個人や法人)に売却され、そのまま農地として使われるのが当然の流れです。

そのため農地法による手続きもそれほど厳しくはなく、以下の申請を行います。

(農地法第3条申請)

 農地法第3条とは、農地を耕作する目的で、所有権を移転したり賃借する場合に必要な申請です。

提出先は農地が所在する市町村の農業委員会で、譲渡人、譲受人の双方が申請者となります。

申請者の住所が農地の所在市町村と同じ場合には農業委員会が許可権者となりますが、異なる場合は都道府県知事が許可権者となります。

原則として、農家でない者が農地を取得することはできませんので、以下の条件が求められます。

・取得した農地を含め、取得者が所有する農地の全てを耕作すること(弁部効率利用条件)

・必要な農作業に、取得者が常時従事すること(農作業常時従事要件)

・通勤距離を鑑み、農地の効率的な利用・耕作ができること(農作業常時従事要件)

・経営する農地の面積が、該当する市町村の下限免責をクリアしていること(下限面積要件)

 

【その2:売買した農地を農地以外で利用する】  

登記簿上で「田」や「畑」となっている土地でも、実際は耕作を行っておらず、立地的にも宅地や駐車場として利用したい場合があります。

そのように農地を農地以外の目的で利用し、なお且つ所有権の変更を伴う場合に行うのが以下の申請です。

(農地法第5条申請)

農地法第5条とは、農地を農地以外で利用することを目的に権利移転(売買や賃貸等)する時に必要な申請です。

提出先は農地が所在する市町村の農業委員会で、申請者は譲渡人・譲受人の双方です。

土地の利用目的が耕作ではないため、農業を生業としない者でも取得することができます。

以下の条件が求められます。

・概ね1年以内の利用計画があること

・購入資金が確保できることを証明できる(預金残高証明や融資証明等)

・農地を転用する正当な理由がある

など。

 

農地を相続して取得する

 売買の場合と異なり、相続では譲受人(相続人)の意思と関係なく農地を譲り受けることになります。

そのため農地法の適用を受けることなく、農地を取得できます。

土地を相続するためにいちいち農地法の申請が必要だと、相続手続きの円滑な処理ができず、相続人にとって負担が大きいです。

そのため農地であっても、相続で取得する場合は例外的に申請が不要とされているのです。

 

 相続した農地を売却する場合に必要な手続き

相続した農地を売却する場合は、農地法の申請を買主が行うのが一般的です。

売買契約書に「売主は申請手続きに協力する」という趣旨の文言が付され、申請書の記入などが求められます。

また、登記簿の所有権欄に相続を経由した旨の記載が求められますので、所有権移転登記に必要な「遺産分割協議書」などは、早めに作成しておきましょう。

 

まとめ

相続によって農地を取得した場合は、売買などで取得する場合に必要な農地法の申請手続きは不要です。

しかし売却する際には、登記簿で「相続があった」旨の記載が要求されます。

また、売買契約自体にも「真の所有者である」旨の証明は必須ですので、遺産分割協議書などの「相続情報証明書類」は、早めに準備しておきましょう。