遺産に対する課税が相続税です。
相続があると必ず相続税が課税されるわけではなく、遺産が基礎控除以下だと相続税の支払いは原則的に必要ありません。
遺産は相続人の今後の生活の基礎になる財産だからこそ、課税により相続人の生活が困らないよう相続税の仕組みを工夫しているのです。
日本で相続税が課税されるのはどのくらいの割合なのでしょうか。
また、支払われる相続税の平均額はどうなっているのでしょう。
この記事では相続税の現状をご紹介します。
相続税が課税される人の割合は平均9%
国税庁「令和元年分 相続税の申告事績の概要」によると相続の際に相続税を支払う割合は相続100件中平均9件となっています。
相続税はすべての相続ケースで支払いを要するわけではなく、実際に相続税の支払いが必要になるのは100の相続が起きるとそのうちの9件しかないということです。
逆に考えると100件相続が起きてもそのうちの91件については相続税の課税が発生しないことになります。
平成30年と令和元年の相続税の課税状況を表で見てみましょう。
平成30年 | 令和元年 | |
---|---|---|
被相続人数 | 1,362,470 | 1,381,093 |
相続税の申告をした被相続人数 | 116,341 | 115,267 |
課税割合 | 8.5 | 8.3 |
平成30年と令和元年の課税割合を見ると平均9%で推移しているのが分かります。
相続税の課税割合は平成27年に平均4%から平均8~9%台へと急増しています。
以降の相続税の課税割合は令和元年まで同様に平均8~9%で推移している状況です。
平成27年の相続税法改正により課税割合が急増
なぜ平成27年に相続税を課税されるケースが急増したのでしょうか。
急増の理由は相続税ルールの改正です。
平成27年に相続税のルールの「基礎控除」が改正されました。
相続税の基礎控除とは「この金額の範囲内であれば相続税が発生しない」という枠のことです。
平成27年の相続税法改正により従来の基礎控除が大幅に縮小された結果、相続税が課税されるケースが爆発的に増えてしまったのです。
参考として平成27年までの相続税基礎控除と相続税法改正後の基礎控除を比較してみましょう。
●平成26年までの相続税基礎控除
5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
●平成27年相続税法改正後の基礎控除
3,000万円+600万円×法定相続人の数
このように基礎控除の計算式自体が相続税法改正前と後ではかなり違っています。
それぞれの計算式を使って基礎控除を試算してみます。
法定相続人の人数を2人で試算すると相続税法改正前の計算式では基礎控除が7,000万円ですが、相続税法改正後の計算式では基礎控除が4,200万円という計算結果です。
前者では遺産7,000万円まで相続税の課税はありません。
対して後者では4,200万円を超えると相続税の課税対象になってしまうのです。
相続税法改正によって相続税基礎控除の枠が大幅に縮小されたため、結果的に基礎控除の枠からはみ出してしまう相続ケースも増えました。
平成27年から相続税を課税される平均課税割合が一気に2倍近くまで増えている背景には、相続税法改正という事情があるのです。
支払った相続税の平均額は約1,800万
相続税の支払いが必要になるケースでは平均どのくらいの課税が発生しているのでしょう。
相続税の平均課税額についても見てみましょう。
平成30年 | 令和元年 | |
---|---|---|
課税価格 | 162,360億円 | 157,843億円 |
相続税額 | 21,087億円 | 19,754億円 |
被相続人1人あたりの課税価格 |
13,956万円 | 13,694万円 |
被相続人1人あたりの相続税額 | 1,813万円 | 1,714万円 |
国税庁「令和元年分 相続税の申告事績の概要」によると相続税の支払いが必要になるケースでの平均税額は平均1,800万円となっています。
平成30年と令和元年では1,700万円~1,800万円で推移していますから、相続税の平均額は1,800万円ほどということになるはずです。
相続税額の平均は平成27年から平成29年についてもあまり変化がありません。
平成30年と令和元年と同じように相続税額の平均が1,700万円~1,800万円で推移しています。
近年の相続税について総括すると「課税されるケースの割合が増え、相続税額は平成27年以降1,700~1,800万円が税額の平均になっている」ということです。
今回は相続税の平均について紹介しました。
次回は相続税の計算方法や計算例について解説します。
相続税の計算をするときは専門家に相談し正確な相続税額の把握に努めてはいかがでしょう。
そのうえで相続税対策や申告を進めてはいかがでしょうか。
皆さんの参考になれば幸いです。