独身者が遺言書を作るべきケースとは?(後半)

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今回は前回からの続きで、独身者が遺言書を作るべきケースなどについて見ていきたいと思います。

 

自筆証書遺言書の書き方

自筆公正証書遺言は手軽に作成できる反面、決められた方式をしっかりと守らないと無効になる恐れがあります。

かならず全文、日付、氏名を自筆で書かなければいけません。押印も必要です。
このうちどれが1つでも抜けると無効になります。

 

紙とペンに関しては特に制限はありません。
通常は検認や相続手続きの際にコピーしやすいようA4かB5サイズの保存にたえうる紙を使用します。
ペンも鉛筆ではなくてボールペンや万年筆、サインペンなどを使用しましょう。

 

書き間違いや内容訂正に関しては法律で細かく加除訂正の方式が定められています。
1か所だけならまだしも、複数の部分を書き間違えた場合は最初から書き直したほうがよいでしょう。

 

封印をするかどうかは自由です。ただ変造・汚損を防ぐためにしておいた方がよいでしょう。
封筒にはわかりやすいように「遺言書在中」と書いておきます。

封筒の裏には遺言書の作成年月日を書き署名・押印、さらに封印します。
さらに死後かってに開封してしまわないように「本遺言書は遺言者の死後未開封のまま家庭裁判所に提出のこと」などと添え書きしておくとよいでしょう。

 

 

内縁の相手に譲る遺言書の文例

 

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内縁の相手に財産を譲りたい場合は、相手の住所、氏名、生年月日と遺贈する財産を特定して明記します。

 

相続人がいない場合や遺族が兄弟姉妹だけの場合は、内縁相手に全財産を譲るという遺言をのこしても遺留分を請求される心配はありません。

 

またトラブルを防ぐためにも遺言執行者を指定しておいたほうがよいでしょう。

 

ペットの世話を条件にした遺言書の文例

 

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ペットの世話を依頼する場合は上記の文例の様に、遺贈の条件を明記します。できれば遺言執行者も指定しておきましょう。

当然ながら自筆証書遺言の場合は「日付、署名、押印」は必須です。

 

公正証書遺言書の作成方法

すでに解説した通り、自筆公正証書遺言は手軽に作成できますが確実性に欠けるので、希望通りに遺言が実現されるのか不安がのこります。

その点、公正証書遺言は安心かつ確実に遺言を実現することができます。

 

確かにいくらか費用はかかりますが、自分で遺言書を作成するより簡単な場合があります。
自筆で全文書く必要がありませんし、文面も一字一句方式通りに書くよう注意する必要もありません。

遺言内容の趣旨を伝えさえすれば、あとは公証人が文面を作成してくれます。
要式不備で無効になる心配や保管に関する心配もありません。

 

まずは事前準備

どの種類の遺言書についてもいえますが事前準備は大切です。
まずは財産を譲りたい人や財産の内容を確認していきましょう。

 

遺言書では財産を譲る相手や財産について正確に記して特定する必要があります。
財産を譲りたい相手の氏名、住所、生年月日を確認するために住民票を準備しておきます。
また譲りたい財産についても財産の目録を作成しておきましょう。

 

そのうえで遺言の内容についてもあらかじめ考えをまとめておきます。

 

また、公正証書遺言の作成には証人2人の立ち合いも求められます。信頼できる友人や弁護士・税理士など専門家に依頼しておきましょう。

適当な人が見つからない場合は、有料ですが公証人が紹介してくれます。

 

公証人との打ち合わせ

ここまで準備できたら実際に公証役場へ行って打ち合わせをしましょう。
公正証書遺言は全国どこの公証役場でも作成することができます。

 

初回の打ち合わせ時に遺言書が作成されることはまずありません。
遺言書の内容や必要書類の確認、文面の推敲を重ねてから、日時を決めて証人2人にも来てもらい公正証書遺言を作成します。

 

公証役場へ行く際は遺言者の印鑑証明書を持参しましょう。誰が遺言するのかの確認のために使用します。

 

証人2人立ち合いのもと公正証書遺言を作成

遺言書作成当日は下記を忘れずに持参しましょう。

  • 遺言者の実印
  • 遺言者の印鑑証明書
  • 証人の認印(遺言者が手配した場合)
  • 現金

 

当日は、公証人はまず遺言者が本人であることを確認し遺言書を一字一句読み上げます。

 

遺言者は内容があっていることを確認し、終えると公証人、遺言者、証人の全員が遺言書に署名押印します。

作成し終えると後述のように法律で定められている作成手数料を支払います。

 

証人を手配してもらったときは証人にも手数料を支払います。公証人に証人を紹介してもらった場合は大体1万円前後です。

完成すると公正証書遺言の原本は公証役場で保管されます。正本と原本は遺言者に渡され、遺言者が保管します。

 

仮に正本や謄本を紛失してしまっても公正証書役場の場合は原本が公証役場にあるので安心です。

 

 

公正証書遺言の作成にかかる費用

公証人に払う費用は下記のように法律で定められています。

目的価額 手数料
100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 11000円
500万円を超え1000万円以下 17000円
1000万円を超え3000万円以下 23000円
3000万円を超え5000万円以下 29000円
5000万円を超え1億円以下 43000円
1億円を超え3億円以下 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額
引用:「公正証書遺言を作成する場合の手数料」(日本公証人連合会)

上記表のうち目的価額は相続人、受遺者ごとに受け取る財産の価額です。
相続、遺贈額が1億円までのときは11,000円が加算されます。

たとえば下記のように計算します。

相続人2人で相続財産が1人4,000万円の場合:69,000円(29,000円×2+11,000円)

これに用紙代が加わります。
遺言書の枚数によって違いますが大体合計3,000円くらいです。

 

独身者が遺言書を作成するときの書き方や注意点について解説してきました。

遺言書をのこすことでそれまでお世話になった人や友人に財産を遺贈して感謝の気持ちを示すことができます。
出身校や公益団体に寄付したいという方もおられるでしょう。

 

とはいえ、言葉は悪いですが、しろうと考えで遺言書を作成してしまうのはリスクが伴います。
遺留分の扱いについてなどは特にそうですが、作成時には法律上の問題点がないか弁護士など専門家に相談することをおすすめします。

そうすることで確実な遺言書を作成して、願いをかなえることができるのです。