空き家の売却と居住中の売却、同じ家でも税金が安くなる方法がある?
不動産業者で働いていると、友人や親せきから不動産に関する相談をされることがよくあります。とりわけ多いのが「売るタイミング」です。
ただ単に「不動産を高く売却したい。いつが売り時か?」との相談もありますが、親が歳をとってくると「後々相続する家をどうすればよいか?」との相談も増えてきます。
不動産の売却利益は売却価格よっても変動しますが、売却後手元に残った利益に対して課税される税金額によっても大きく変わります。
当ブログは相続に関するお悩みを解消すべく、現役の宅建業者が執筆しておりますので、今回は「後々相続する家」をどうするべきかを考えてみましょう!
【その1:居住用財産の特別控除ってなに?】
相続を考える前に、まずは居住中のお家を売却した時の税金について知っておきましょう。
家というのは人間が生活する上での基盤となる場所であり、財産の中でも特に重要視されています。
その為、所有者が現に住んでいる家(これを「居住用財産」と言います)を手放す場合は、税制上特別の優遇があります。それが「居住用財産の3,000万円特別控除」です。
不動産を売却した時に得られる利益を「譲渡所得」と言い、これが課税対象額となります。
3,000万円特別控除は、この譲渡所得が3,000万円控除される制度なのです。
「住んでいる家を手放してしまうのだから、あまり高い税金を払わせるのはかわいそうだろう」と国税庁が思ったかは分かりません。
が、住んでいる家を売却すると、課税額が3,000万円控除されると覚えておきましょう。
詳しくはこちら
引用:国税庁ホームページ
(1)居住中の定義はとは?
ところで「居住中」とは、何を基準に言うのでしょうか?
普段その家で暮らし、学校や仕事にもその家から通う。と言った、生活の基盤になっていることが「居住」の定義です。
上記はごくごく当たり前のケースですが、世の中には「この場合はどうなの?」と判断に迷うケースも多々あります。
例えば、年老いた両親が老人ホームに入居した場合。この場合、生活の拠点を完全に老人ホームへ移しているのなら、自宅に「居住している」とは言えません。
同じ老人ホームでも、完全な入居ではなくショートステイやデイサービスの場合は、生活の拠点は自宅のままなので「居住している」ことになるのです。
税制改正で空き家にも特別控除が適用される!
居住財産売却時の優遇措置である3,000万円控除ですが、条件付きながら平成28年の税制改正により相続した空き家にも適用されることになりました。
これは、増え続ける空き家の対策を進める趣旨によるものだそうです。
しかもこの制度、居住用財産を売却するよりも税額がお得になるかもしれないのです!
居住財産の特別控除は1件につき3,000万円ですが、相続した空き家の控除額は3,000万円×相続人の数なのです!
例えば譲渡所得が7,000万円の家があったとします。
これを居住中に売却すると、譲渡所得7,000万円から特別控除の3,000万円が差し引かれ、課税対象額は4,000万円となります。
ところがこの家を、相続後空き家として売却すると、譲渡所得7,000万円から3,000万円×相続人の数が差し引かれます。仮に相続人が2人だとすると、7,000万円から6,000万円を引いた1,000万円が課税額となるのです。
詳しくはこちら
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
まとめ
税金は、専門家じゃないと分からない難しい制度です。
でも、住んでいる家を売ると税金が優遇されるとことだけでも覚えておくと、いざという時「詳しい人に相談しよう!」という気持ちになり大損は免れるはずです。
いずれ相続する予定の不動産がある方は、早めに専門家に相談するのも有りだと思います。