土地の売却でいらしたお客様のお話です。
山奥に複数の土地をもっているが、長い間使っていないので処分したいとのご相談です。
場所を確認してみると、集落からも距離が離れ、周囲に人工物は殆どありません。
なぜそんな場所に土地を所有しているか尋ねると、昔、親御さんから相続したとのことです。
代々その地域に住んでいるそのお客様は、何の疑問もなくその土地を相続したそうですが、最近では管理を負担に感じるようになってきたそうです。
残念ながらその土地は、需要を掘り起こすのが大変難しい立地です。つまり、売れそうにありません。
今のところ買い手は見つかっておらず、売主様の負担は当分続きそうです。
ここで一つ、私の中で疑問が浮かびました。
相続放棄された不動産って、最後はどうなるんだろう?
このお客様の場合は相続が完了しているので該当しませんが、もしも不要な土地の相続を放棄したら、その土地はどうなってしまうのだろう?
安易に相続してはいけない土地がある!?
近親者が亡くなったとき、法律で定められた家族らが自動的に相続人となります。
しかし相続人には相続を放棄する権利が認められており、これを「相続放棄」と言います。
相続財産の中には借金など多額の負債が含まれているケースもあり、理不尽な相続から逃れるためには、相続放棄は有効な手段です。
例えば多額の借金を相続放棄すれば、最終的には「回収不能」なり、債権者が泣きを見るという結末が考えられます。これはなんとなく想像できます。
では、放棄した財産が土地の場合はどうでしょうか?
相続放棄をしたくなる土地とは、いったいどんな土地なのでしょうか?いくつかご紹介します。
・使用する予定がなく、所有しても固定資産税ばかり出費する土地
・売却したくても買い手がつかない、利用価値の低い土地
・山林や斜面など、管理にお金がかかる土地
今回ご相談いただいたお客様は、上記のすべてに当てはまります。
このような土地を相続の段階で放棄すると、どうなるのでしょうか?
相続放棄をしても無関係にはならない!?
金銭などの財産と違い、相続した土地には「管理責任」がくっついてきます。
通常、相続放棄をすると、法律で定められた「次」の相続人へと相続は移ります。
そして、放棄した人は相続とは無関係になり「はい、おしまい!」です。
しかし、土地の相続の場合は「はい、おしまい!」にならないのです。
土地の相続の場合、放棄で手放せるのは「名義」だけです。
次の相続人が見つかるまで、土地を管理する責任は残ってしまうのです!
しかし、負担を強いられるような相続を引き受ける人は、まずいません。
次の人も、その次の人も相続放棄をするでしょう。
その結果、相続人はいつまでも土地の管理をする羽目になるのです。
ちなみに、この管理義務は民法940条に規定されていて、違反すると罰則もあるそうです!(涙)
【管理義務を免れる方法は?】
相続人となる身内が全員相続放棄をした場合、管理責任から逃れる方法はないのでしょうか?
実は、あります!かなり面倒な方法ですが、家庭裁判所で「相続財管理人の選任の申し立て」をすればよいのです。
利害関係人または検察官の請求によってなされるものです。
この申し立てが認められ、財産管理人が選任されれば、晴れて不要な土地から解放されます!
【最終的に、土地誰のもの?】
相続人のいない財産は、最終的には国庫に帰属します。つまり、国の財産となります。
このようにして国庫帰属する財産は、毎年、相当数あるのだそうです。
これからの日本の課題
相続人がいない土地や家屋が、全国的にも問題になっています。
人口の極地化や少子高齢社会などが影響する不動産の世界は、世相を反映する鏡とも言えそうです。
日本は国土の小さい国です。地方も都市も今ある不動産を上手に活用して、もっともっと元気な日本を創って欲しいものです。