農地を相続したら知っておきたい、農地法のこと|農地法第5条とは?

 

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こんにちは!estate_diaryです。
 

 数回にわたりお話ししている農地法のお話ですが、ひとまず今回で最終回!

農地法第5条についてです。

相続した農地の売却を考えている場合は、買主が用途変更を希望しているケースも考えられてます。

そんなケースで登場するのが、農地法第5条です。

農地の売却を検討している方は、参考になさってください!

 

農地法とは?

毎回お話ししておりますが、農地法とは、国民の食糧を確保するうえで欠かせない農地を将来に渡って保護するための法律です。

国土の狭い日本では、農地は大切な資源です。

そこで国は、無秩序な用途変更や非効率な耕作から農地を守るために農地法を制定しました。

 

第2章(第3条~第15条)に「権利移転及び転用の制限等」という項目が規定されています。

この項目には、売買を含む譲渡や賃貸を行う場合の許可や届け出について必要なことが規定されています。

 

今回の記事では、第5条を取り上げていきます。

 

第5条の内容とは?

農地法第5条は、権利の変動を伴う用途変更を行う際に必要な申請です。

大まかな内容は第4条の用途変更と同じですが、以下の違いがあります。

 

  1. 当該農地の権利に変動(譲渡や売買、賃貸契約)があること
  2. 用途変更工事を譲受人(もらった人や買った人、借りた人など)が行う(発注する)こと

 

 なお、権利が変動する前に用途変更を行い登記簿上の地目変更を完了した農地は、地目変更によって農地ではなくなります。

地目が農地でなくなった後の土地は農業委員会の管轄から離れ、利用や処分を自由に行えるようになります。

 

第5条申請から地目変更までの流れ

第5条申請は、権利の変動を伴う用途変更手続きです。

売買を例に流れを確認しましょう。 

  1. 売主・買主が売買内容に同意し、契約が成立する
  2. 売主・買主の連名で、申請書を作成する(連名ではあるが、用途変更後どのように使用するかなど、ほとんどの書類を買主側が用意します)
  3. 農業委員会へ提出し、必要に応じで都道府県が許可を出す
  4. 許可書を基に、売買代金の決済及び名義変更手続きを行う
  5. 買主は申請書の内容通りに整地・使用し、現況が農地ではなくなったことを農業委員会へ報告する
  6. 一定期間経過後も現況が申請書通りに使用されていることが認められれば、はれて登記簿の地目変更ができます

 

 ここで注意して欲しいのが、4.以降の内容です。

農地法第5条申請は、許可や届け出だけでは地目変更ができません。

許可などが下りた後に利用状況報告が必要で、これを怠ると、いつまで経っても農地のままです。

第5条の申請では、添付書類として「どのように整地するか」「どのように利用するか」を細かく提示します。

 農業委員会や都道府県は許可などを出した後、当該農地が申請通りに整地・利用されていることをちゃんと確認するのです。

登記簿上の地目を早く変更したい場合は、利用状況報告を速やかに行ってください!

ちなみに農地転用許可が下りたにもかかわらず、利用状況報告をせずに放置された農地も稀に存在します。

放置期間の長さによっては、再申請を求められることもあるのでご注意ください。

 

プラスアルファの知識

【現況と登記簿上の地目が異なる場合】

上記例と関連しますが、登記簿上の地目が農地でありながら、現況が宅地や雑種地になっているケースがあります。

過去に農地転用申請が行われた上記のような土地に見られるケースです。

このような土地で所有権移転登記をする場合は、所有権の前に地目変更の登記が必要です。

地目は登記簿の「甲区」(所在地や面積、区分などを表記した項目)の記載事項で、その登記申請は土地家屋調査士の独占業務です。

上記のような土地の譲渡や売買を行う場合は、決済の前に土地家屋調査士へ相談しましょう。

なお、土地家屋調査士に上記のような事情の地目変更を依頼する際は「農地転用受理通知書」の添付で対応してもらうことも可能です。