独身者が遺言書を作るべきケースとは?(前半)

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自分は独身だし遺言書なんて作らなくてもかまわない。
このように考える方もおられます。

 

でも自分に何かあったときに、遺言書がなかったら苦労して蓄えた財産がどうなってしまうのかご存知でしょうか。

 

できれば自分の財産はお世話になった人や懇意にしていた友人、または社会のために少しでも役立ててもらえれば嬉しい、という方もおられます。

でも遺言書がないとその願いをかなえることはできないのです。

 

独身で法定相続人がいない人の財産は国庫に入る

相続人がいないとき、遺言が無い限り相続財産は国庫に入ることになるのです。

相続人がいないとは具体的にどんなケースでしょうか。

 

配偶者がいなくて子も孫もいない、もちろん親もいない。
そして兄弟もいないし甥・姪もいないというケースです。

つまり独身で第1から第3順位の法定相続人もいない場合です。
この場合、相続財産は国のものとなってしまうわけです。

 

具体的な流れとしては、亡くなったあと家庭裁判所が被相続人の利害関係人(債権者や受遺者など)や検察官の請求によって相続財産の管理人を選任します。
この管理人が相続財産の清算(借金の支払いや遺贈の実行など)とともに相続人を捜索します。

 

捜索しても相続人が期間内(6か月以上)に現れなければ相続人の不存在が確定し、相続財産は国庫に帰属することになるのです。

 

特別縁故者は財産分与の申し立てができる

とはいえ、法律上の相続人ではなくても同様に扱われてもいいような立場の方もいるかもしれません。
そのような人は特別縁故者として相続するための道も開かれています。

下記のような人は申し立てをして認められれば財産の全部または一部を受け取ることができると民法で定められています。

 

  • 被相続人と生計を同じくしていた内縁の妻や夫
  • 事実上の養子
  • 被相続人の療養、看護に努めた人

 

このような人が財産分与の請求をする場合、相続人がいないと確定してから3か月以内に家庭裁判所に申請しなければなりません。

 

独身者が遺言書を作るときに考えられるケース

長年苦労して働いて蓄えた財産がすべて国庫に渡る、となると少し複雑で虚しく感じてしまうかもしれません。

 

それだったらお世話になった人にお金をのこしたい。
少しでも感謝の気持ちや思いを伝えたいと思われる方も多いと思います。

 

また独身の方であれば、疎遠になってしまった兄弟姉妹よりも恋人や友人にお金をのこしてあげたいと思うかもしれません。

 

そこで、以下の部分で独身者が遺言を作成した方が良いと思われるケースを紹介していきます。

 

内縁の妻(夫)がいる

事実婚の関係でいくら長年一緒に暮らしていても、法律上の婚姻関係になければ内縁関係となり相続権はありません。
本人が亡くなったとき内縁の相手に財産を相続させることはできないわけです。

 

このような場合は遺言書で財産を遺贈してはじめて内縁の相手に財産をのこすことができます。

遺言書には相手の住所、氏名、生年月日と遺贈する財産を特定して明記しましょう。

 

遺言者が独身で配偶者、子どもがいなくても父母がいる場合は、法定相続人が父母になるので遺留分への配慮も必要です。
配偶者、子ども、父母がおらず兄弟姉妹だけの場合は、遺留分がないため全額を内縁の妻(夫)に遺贈しても遺留分を心配する必要はありません。

 

なお、内縁の相手との間で子どもがあり認知している場合は、その子が法定相続人となります。

 

お世話になった人や友人に遺贈したい

生涯独身だったり身寄りが無かったとしても、人生を歩んで行くうえでお世話になった方や恩人といえる人がいるはずです。
また親身になって介護や身の回りの世話をしてくれた人もいるかもしれません。

そうした人に財産を遺贈することで感謝の気持ちを表したいという場合もあるでしょう。

 

実際のところ、当人たちが「私がお世話をしたのだから遺産をわけて欲しい」などとはなかなか言い出せないものです。
示してくれた親切や貢献度に見合うだけの財産を遺言で遺贈するのが思いやりかもしれません。

 

遺言には受遺者が特定できるように住所、氏名、生年月日などを明記し財産を譲る理由も記しておくとよいでしょう。

 

また万が一、受遺者が遺贈を辞退した場合の処理の仕方についても記しておいたほうがよいかもしれません。

財産は相手が受け取りやすいように換金処分して遺贈するのも一つの方法です。

 

ペットの世話を依頼したい

ペットがひとり暮らしのパートナーという方も増えています。
この場合も自分に何かあったあとペットがどうなるのか気になると思います。

もし世話をする人がいなければ最悪の場合は処分されることになりかねません。
そのような事態を避けペットを守るためにも遺言書を作成しておいた方がよいでしょう。

 

とはいえペットに相続権はないので、ペットに財産を相続させることはできません。
そこで「負担付遺贈」というものを活用します。

ポイントが3つあります。

 

1.ペットの世話を条件に財産を遺贈する
ペットの世話を依頼する遺言を書いたとしても、法的拘束力はありません。
けれどペットを引き受けることを条件に財産を遺贈することはできます。
遺言の内容を、ペットの世話を引き受けることを条件に財産を譲渡する、というような文面にします。

 

2.生前に了解を得ておく
相手の都合を考えずに遺言すると引き受けてもらえない可能性があります。
もし適当な人がいなければペットの世話をしてくれる会社と契約を結ぶという方法もあります。

 

3.遺言執行者を指定しておく
遺言執行者は受遺者がペットの世話をしないなど義務を怠ったときに、しっかりと世話するよう催促します。
それでもいうことを聞かないときは家庭裁判所に遺言の取り消しを請求できます。

 

遺言書の種類

ここまでは独身者が遺言作成を考えた方がよい様々なケースについて取り上げてきました。

ただ、遺言書はどのように書いてもよいわけではありません。定められた方式に従って書かないと法的に無効になってしまいます。

民法で定められた普通方式は3種類あります。
どの方式を選ぶのかは自由ですが、それぞれメリット・デメリットがあるのでよく考えて選ぶ必要があります。

 

自筆証書遺言の特徴

自筆証書遺言は遺言者が全文を自筆で書いて署名・押印して作成します。保管も自分でします。
紙とペンがあればいつどこでも作成できます。

 

自筆証書遺言のメリット

  • もっとも手軽に作成できる
  • 費用がかからない
  • 内容について秘密を保てる

 

自筆証書遺言のデメリット

  • 要式不備で無効になる恐れがある
  • 偽造、紛失、改ざんのリスクがある
  • 死後発見されないこともある
  • 死後は家庭裁判所での検認の手続きが必要

 

公正証書遺言の特徴

遺言者が口述した遺言の内容を公証人が筆記し作成したものが公正証書遺言です。
原本は公証役場で保管され、正本と謄本が遺言者に渡されます。

 

公正証書遺言のメリット

  • 公証人が作成するので要式不備で無効になる心配がない
  • 公証役場で保管されるため偽造、紛失のリスクがない
  • 死後の家庭裁判所での検認手続きが不要

公正証書遺言のデメリット

  • 公証人や証人に依頼するための費用がかかる
  • 遺言内容が公証人と証人に知られてしまう

 

秘密証書遺言の特徴

秘密証書遺言は自筆証書遺言と公正証書遺言の中間的な方法になります。
手間の割にメリットがすくないので実際に利用されることはほとんどありません。
遺言の内容に関しては秘密が保たれ、作成した事実のみが公証役場に記録されます。

 

秘密証書遺言のメリット

  • 遺言書の本文は代筆やパソコンで作成したものでも有効(署名は自筆)
  • 内容に関しては秘密を保てる

 

秘密証書遺言のデメリット

  • 要式不備で無効になる恐れがある
  • 公証人や証人に依頼する費用がかかる
  • 死後は家庭裁判所での検認の手続きが必要
  • 偽造、紛失、改ざんのリスクがある

 

今回は独身者が遺言書を作るべきケースについて解説しました。
まだまだ解説しきれていませんので、次回も続きの内容で記事を更新したいと思います。