相続税の計算方法や計算例

f:id:kateikyoushilife:20210210211755j:plain

前回の記事では相続税の現状をご紹介しました。
この記事では相続税の計算方法や計算例と共にご紹介します。

 

 

相続税の計算方法

財産を相続予定の人やすでに相続した人は自分にどのくらいの相続税がかかるのか不安ではないでしょうか。
相続税自体が課税されるかどうかも不安に感じるはずです。
相続税の税額の把握や相続税の課税の有無について判断する助けとして、相続税の基本的な計算方法をご紹介します。

 

相続税の計算は7つのステップで行います。

 

 

まずは遺産と相続人を調査する

相続税の計算をするときはまず遺産と相続人の調査をしなければいけません。
法定相続人の数は基礎控除など相続税の計算に関係します。
また、遺産について明確にしておかなければ相続税の計算ができません。相続税とは遺産への課税だからです。

 

 

相続税の計算をする前提として、まずは相続人と遺産について調査しておきましょう。
相続人や遺産の調査が難しい場合は弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
また、相続税の詳細な計算には専門知識を要するため、計算が難しいと感じた場合や詳細な相続税額を知りたい場合も税理士などの専門家に相談してみるといいでしょう。

 

 

相続税の基礎控除を計算する

遺産が相続税の基礎控除の範囲内であれば相続税の課税はありません。
遺産や相続人の調査が終わったら相続税の基礎控除を計算します。
相続税の基礎控除の算出にはすでに説明した相続税法改正後の計算式を使います。

 

3,000万円+600万円×法定相続人の数

 

法定相続人の数のところには相続税計算の最初のステップで調査した法定相続人の数を当てはめてください。

 

 

遺産の財産ごとに相続税評価

遺産の中にはすぐに相続税に使う評価額がわかる財産と容易には分からない財産があります。
現金や預金は金額(評価額)がひと目で分かりますが、不動産などは見ただけでは評価額が分かりません。
美術品や宝飾品なども即座に相続税の計算に使う評価額が分かるわけではありません。
そのため遺産の財産の種類ごとに相続税の評価額を算出する必要があります。

 

 

遺産の計算や仕訳を行う

不動産や預金などプラスの遺産を計算します。

たとえば預金が5,000万円で不動産の評価額が2億円の場合は遺産総額2億5,000万円です。
相続には負債も関係しますので負債についても計算が必要になります。
負債がプラスの遺産を上回っている場合には相続放棄や限定承認などの裁判所手続きを早めに検討することが重要です。

 

 

注意したいのは遺産に含まれるのか判断が難しい物です。
被相続人の家に神棚や位牌があったらどうでしょう。
神棚や位牌については相続税評価を行い遺産総額に含めなければならないのかと思うかもしれません。

 

 

相続税には非課税財産が定められています。
位牌や仏壇、神棚などは代表的な非課税財産です。
この他に国や地方公共団体、特定の公益法人などに寄付した財産も非課税財産として扱われます。

遺産総額を計算したら次は遺産から相続税の基礎控除を引きます。

 

 

相続税の総額を計算する

法定相続人たちが仮に法定相続通りに相続したものとして各相続人の相続税額を計算します。
各相続人の相続税額が出たらすべて足して相続税の総額を求めます。

 

 

相続税の税率は遺産額により変動する仕組みです。
相続税額が1,000万円の場合は相続税率10%、1,000万円を超えて3,000万円までになると相続税率は15%になります。
遺産が6億円を超えると相続税率は最大税率である55%が適用されますので、相続税の税率は10%~55%の間で変動するかたちです。

 

 

注意したいのは遺産の額に応じた控除額が定められている点になります。

 

 

遺産1,000万円以下については控除なしになりますが、1,000万円を超えて3,000万円までになると50万円の控除が定められているのです。
控除は相続税率に伴い変動し最高で6億円超の7,200万円まで上がります。
相続税の計算をするときは控除額を忘れないよう注意してください。

 

 

各相続人の相続税額を計算する

相続人すべての相続税額をプラスしたものを改めて各相続人に配分して相続人個人の相続税額を算出します。

なぜこのような流れで各相続人の相続税額を計算するかというと、法定相続通りに相続人たちが遺産を相続するとは限らないからです。

 

 

遺産分割協議によって遺産分割を自由に決めることもあるため、法定相続による相続が行われたものと仮定して各相続人の相続税額を計算してその相続税額を足し、あらためて遺産分割に合わせて相続人に相続税を分配する流れで計算します。
以上が相続税の基本的な計算方法です。

 

 

相続税の計算例

相続税の基本的な計算方法を説明したところで相続税の試算例についても解説します。
相続税を計算するときの参考にしてみてください。

 

 

父親が亡くなり相続人は母親(配偶者)と子供が3人という相続人計4人のパターンです。
遺産は次の通りになります。

 

  • 預金と不動産の合計 8,000万円
  • 死亡保険金 2,300万円
  • 負債 1,000万円
  • 葬儀費用 400万円

 

この相続パターンでは被相続人の生前に贈与などはありませんでした。
使える特例を探した結果、相続税の配偶者控除が利用できることが判明しています。
以上の条件で相続税を試算します。

 

 

まずは遺産や負債を計算する

相続税額を計算するためにも遺産や負債の計算をしなければいけません。
遺産の中に生命保険金がありますので、生命保険金の非課税枠を使って計算を行います。
生命保険金は「500万円×法定相続人の人数」が非課税枠です。
生命保険金は2,000万円が非課税枠になりますので、相続税の計算に含めるのは300万円分になります。不動産や現金と合わせて8,300万円です。

 

 

遺産のプラスである8,300万円から負債や葬儀費用を引きます。
負債と葬儀費用の合計金額である1,400万円を引くと残りは6,900万円です。
さらに6,900万円から相続人4人の基礎控除である5,400万円を引くと相続税の対象になる残りは1,500万円という計算結果になります。

 

 

相続人の相続税額を計算する

相続税の対象になる財産を算出したところで相続人全員に法定相続分を配分します。
配偶者が750万円で子供が250万円ずつになり、それぞれの遺産に応じた相続税を計算するという流れです。

 

 

相続税額は配偶者が75万円で子供たちが25万円ずつになります。
相続税総額は150万円です。
この相続税額を相続人の遺産分割協議などに合わせて配分することになります。

 

 

ただし相続税には控除や特例というものがあり、控除や特例を使える場合は相続税負担を軽減可能です。
配偶者と子供3人の相続ケースでは配偶者控除が使える可能性があるため、他の控除や特例と合わせて条件を確認しておく必要があります。
仮にこの相続ケースで配偶者控除を使う場合は配偶者分の相続税が0円になり、相続税総額は75万円に変化するのです。

 

 

相続税の計算方法について解説しました。

相続税の計算は流れだけ見ると単純です。
しかし遺産に合わせた相続税評価などは相続税のルールや法律の深い知識を持っていないと算出が難しいなど、流れだけ追えば相続税を計算できるというわけではありません。

 

自分で相続税の計算をしてもあくまで試算でしかなく、実際の相続税額とはズレが生じてしまう点も注意が必要になります。