民法改正のポイント|不動産相続関連その2:持ち戻し免除

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こんにちは!estate_diaryです。

 

前回に引き続き、民法改正に関する解説をしていきたいと思います。

民法改正の解説と言っても民法全般を解説するのは大変なので、誠に勝手ながら不動産業に関係のある分野を解説中です!

今回は第2弾として「相続法」の中から「持ち戻し免除」に関する改正内容をお伝えいたします。 

 

「持ち戻し」ってなぁに?

「持ち戻し」なんて日常生活ではなかなか聞かない言葉ですね。

私もこの仕事をしていなければ、おそらく出会わなかった言葉だと思います。

「持ち戻し」とは、生前贈与で受け取った財産を遺産分割の総額に加算することです。

 

【例】

被相続人A(亡くなった人)が生存中に、後の相続人となるBに財産の一部を贈与(生前贈与)したとします。

被相続人Aが亡くなって財産分与をするとき、すでに財産の一部を受け取っているBと、B以外の相続人が同じ割合で遺産分割を受けるとB以外の相続人が損をしてしまします。

そのためBがAから受けた生前贈与は「特別受益」として扱われ、原則として遺産分割する財産の総額に加算されます。

この加算する行為を「持ち戻し」と言うのです。

 

【特別受益】

相続人が複数人いる相続において、一部の相続人が被相続人から個別で遺贈された(受け取った)財産が特別受益です。一部の相続人だけが生前に贈与を受けているにも関わらず、均等に遺産分割を行ったのでは、他の相続人にとって不公平です。特別受益とは共同相続人の公平を保つ観点から生まれた概念なのです。

 

原則として、共同相続人の中に生前贈与を受けた者がいる場合は、その財産は特別受益として扱われます。

そのため現存する財産に特別受益を加算したものが相続財産の総額とされ、そこから各相続人の相続額が割り出されます。

特別受益を受けた相続人は、相続額から特別受益分を差し引いた額を受け取ることになります。

 

持ち戻しの免除

生前贈与を相続財産に加算する「持ち戻し」ですが、実は免除することができます。

生前贈与が特別受益として相続財産に加算されると、受贈者に対して「他の相続人よりも多く財産を譲りたい」と思った被相続人の気持ちが台無しになってしまうからです。

この被相続人の思いを実現させる制度が「持ち戻しの免除」なのですが、今回の民法改正で、その「意思表示」に関して新たな項目が追加されました。

改正前の持ち戻し免除

元々の法律では、被相続人が贈与等によって財産を分与した場合、その財産を特別受益として取り扱わない旨の意思表示が必要でした。

その意思表示を「持ち戻し免除の意思表示」と言い、この意思表示がされたときは、遺産分割において持ち戻し計算を行わないことが認められていました。

 

改正後の持ち戻し免除

改正後の法律では、持ち戻し免除の意思表示において「推定」が働く要件が新設されました。

一方の配偶者が他方の配偶者に居住用不動産の贈与等を行った場合、持ち戻し免除の意思表示を行っていなかったとしてもその意思表示があったもの」推定するという内容です。

この推定は、婚姻期間が20年以上の夫婦間で相続が発生した場合に適用されます。

この改正で遺産分割における財産の計算上、当該居住不動産の持ち戻しが原則不要となりました。

この規定により生存配偶者の相続分の保護が図られ、生活が困窮することを防ぐ効果が期待されます。

 

「持ち戻し免除」のまとめ

持ち戻し免除は以前から存在する制度でしたが、遺贈者の「持ち戻し免除の意思表示」が要件であったことからハードルの高いものでした。

しかし今回の法律改正で、20年以上の婚姻期間があれば免除の意思が「推定」されるようになりました。

これは法律の専門知識を持っていない方でも叶う要件で、ハードルもかなり下がったと言えます。

ただし、遺産分割のときにこの制度を知らなければ活用できません。

万が一、居住不動産を所有する配偶者が亡くなってしまったときは、専門家を交えて遺産分割協議を行うことをお勧めします。