亡くなった親御さんが資産家だった場合、残された子供たちの間で問題になるのが遺産分割です。
遺産相続の基本的な割合は法律で決められていますが、単純に当てはめられないのが遺産相続の難しさです。
「相続争い」との言葉があるくらい揉め事の原因となる遺産分割ですが、なにもお金持ちだけの問題ではないようです。
相続でもめるのはどのような家族なのでしょうか?
一説によると、相続争いは一般的な中流家庭で多く発生するそうです。しかし、必ずしも揉める家庭ばかりではありません。
これは、先日売買が成立したお客様のお話です。
農業をしていたお父様がなくなり、使っていない農地を売却されました。
兄弟4人が相続人で、土地の売却代金や預貯金など、合わせて1億円近い財産が残ったそうです。
このご家庭では遺産分割協議で揉めることもはなく、スムーズに相続がすすんだそうです。
その土地は長い間、畑として使っていたのですが、ここ数年急激に宅地化が進んだエリアにありました。
土地自体は地目が「畑」であるため、相続されたご家族はそんなに価値があるとは思っていなかったそうです。
相続人の構成
このご家庭の場合、お母さんはお亡くなりになっていたため、相続人は子供4人だけです。
しかしちょっと驚いたのが、一番下の御兄弟は非嫡出子。いわゆる、お父さんが外で作った腹違いの子供だそうです。
一般的に考えて、揉めるとしか思えません。
しかしこのご家庭では、円満に遺産分割をしたというのです。
揉めなかった理由
このご家庭の場合、揉めない理由がいくつかありました。
■理由その1:兄弟の仲が良い
「遺産分割協議では、これまで仲の良かった兄弟でも醜い争いをする」なんて話も聞きますが、このご家庭は違っていたようです。
お母様が肝の据わった方だったようで、小さい頃から、腹違いのご兄弟とも仲良くするよう言われて育ったそうです。
今は遠くに住んでいるそうですが、お互い憎まれ口もたたくほど仲良しなんだとか。
■理由その2:そもそも遺産を当てにしていなかった
このご兄弟は数筆の土地を相続していましたが、どの土地も農地で、さほど価値が期待できない土地でした。
そのため相続人全員が土地の存在を忘れるほど、当てにしていなかったそうです。
しかしその土地があった場所は、お父様がなくなる数年前から宅地化が急激に進み、地価がどんどん上がっている地域でした。
当社でお預かりしたときには、10年前の相場より5~6倍に跳ね上がっていたのです。
私が土地の査定額を説明したときには「こんなに高いの?ラッキー!」と言って、皆さんゲラゲラ笑っていたのを覚えています。
■理由その3:遺産分割協議は譲り合い
このご兄弟は仲が良いとお話ししましたが、その仲の良さは、お互いを尊重する気持ちから生まれていると思われます。
一番上のお姉さんは、遺産分割協議で揉めなかった理由を「納得するまで説明した」とおっしゃっていましたが、少しニュアンスが違うと思います。
実際には「納得するまで、相手の話も聞いて話し合った」のだと即座に感じました。
誰かが一方的に自分の都合を説明してきても、それで納得する人はいません。
自分の都合を説明しつつ、相手の話にも耳を傾ける。その両方ができる兄弟だからこそ、揉めずに意見がまとまったのです。
estate_diaryの個人的な見解
遺産分割をする場合、仲の良い兄弟でも相続争いをすると言われています。
正直言って、私は「その兄弟、本当に仲が良いの?」と疑問に感じます。
私の場合は親に資産がなかったため、遺産分割協議の経験がありません。
もし相続財産があったとしても、両親のためにお金や労力を使った兄弟が受け取ればいいと思っています。
実は私、兄弟の中でも、一番両親のために出費をしている自負があります。
休みのたびに時間を割いて、あちこち遊びにも連れて行きました。
確実に一番親孝行(自称)です。
もしも自分の親が資産家であれば、一番多く相続財産を要求したいところです。
でも私は、遺産分割協議になっても「私にたくさんくれ!」とは言わなかったと思います。
なぜなら、親孝行は自分がしたくてしていることです。遺産をたくさんもらうためではないからです。
だって親の財産なんて、もともと自分のモノではありません。たとえ金額か少なくても、もらえるだけでラッキーだとは思いませんか?
相田みつをさんの言葉で「奪い合えば足らぬ 分け合えばあまる」という一節があります。
私の意見はあくまでも想像の域ですが、今回ご紹介したご兄弟は、この言葉を実践している素敵な人たちだと思いました。